役員車両運転業務委託契約書

個人への業務委託をしたいということで、ご相談を受けることがあります。

今日は、先日ご相談を受けた「役員車両運転業務委託契約書」について。

お客様からいただいた情報から、業務内容については、大きく3つあって、

1.役員車両の運行(役員指示の下)

2.役員車両の日常点検(始業前点検)

3.総務業務の雑務(車両を運転していない時間)

のとおりです。

また、条件は、

1.車両を運行した回数・日・時間に関わらず、月額報酬は契約書に記載の金額

2.運行できない場合(お休みの場合)、月額報酬から減額

3.車両は会社所有

というものです。

まず、業務内容についてですが、ずっと役員の車に乗っていないといけませんので、拘束性があります。

また、どこに行くのか指示をするということもあり、仕事の依頼に対して拒否できないことから、指揮監督関係があると言えそうです。

更に、総務業務の雑務も結局は指揮命令を受けて実施するものでしたので、この時点で「労働者性」があると考えられます。

次に、条件ですが、月額報酬が実績ベースでないですし、業務実施できない場合、減額されるということですので、報酬の労務対償性があり、「使用従属性」を補強するものと言えます。

更に、車両を個人事業主が用意せず、会社から個人事業主に使用させることは、機械器具の負担関係から、「労働者性」を補強する要素となると言えます。

せっかく業務委託契約書を作成してくださいと依頼されたのに、残念なのですが、お客様には、上記の見解をお伝えさせていただくとともに、スキームの見直しをお願いし、契約書の作成はお断りしました。

なお、いただきました業務委託契約書には、「独立事業者」「自らの裁量」との文言がありましたが、実体とは大きく乖離しており、契約書でいくらそう記載があっても、実体で判断することになることも指摘させていただきました。

このように、個人への業務委託は、非常にデリケートで難しいものであります。

また、こちらの伝え方ひとつで、労働基準監督署の担当者の方でも見解が異なる場合もございます。

いずれにしましても、以下の「労働者性の判断基準」を基に判断していますので、これを理解することが重要となります。

「労働基準法研究会報告」(昭和60年12月19日)

経費削減という名の下に、個人との業務委託契約をご検討されている会社様は非常に多いと思います。

個人事業主とのトラブルだけでなく、労働基準法などにも違反することになれば、会社の信用を大きく落としてしまうことにもつながりますので、業務委託契約書作成の専門家にご相談をいただければと思います。