業務委託契約書の「請負」と「委託」の違い

ご訪問ありがとうございます。豊富な企業法務経験による契約書の作成リーガルチェック専門「ヒルトップ行政書士事務所」の濱村です。

業務委託契約書の作成やリーガルチェックをこれまで数多く対応してきましたが、クライアントの方から、「請負」と「委託」の違いがよく分からない、また、「委託」は「請負」と異なり重い責任を負わない、などという声を伺いました。

この2つは、誰かに代わりに何かを行ってもらうことを指します。

よく「業務請負」「業務委託」などと労働契約や派遣契約と一線を画す意味で、同じような意味で使用する場面もありますが、異なる意味で使用される場面もあります。

では、この2つをシステム保守業務を例にして、分かりやすく説明すると、まず「委託」では、

「委託」:
誰かに代わりに何かを行ってもらうのですが、主に「請負」と「準委任(=委任)」の性質があります。

そのため、以下の3点が存在することとなります。

①「請負型の委託」

➁「準委任型の委託」

③「請負型・準委任型混在の委託」

ちなみに、①は仕事の完成責任を負うもので、➁事務の処理を善管注意義務をもって行っていれば足りるもので、①「請負型の委託」のほうが重い責任を負います。

それぞれより具体的な例を挙げますと、

①「請負型の委託」→ソフトウェアの不具合修正業務、ハードウェアの故障修理業務など

➁「準委任型の委託」→連絡受付業務、問合せ回答業務など

③「請負型・準委任型混在の委託」→ソフトウェアの修正業務、ハードウェアの故障修理業務、連絡受付業務、問合せ回答業務など

となります。

一方、「請負」では、

「請負」:
誰かに代わりに何かを行ってもらうことまでは同じなのですが、仕事の完成責任を負ったり、業務完了後や納品後に契約不適合があった場合には、契約不適合責任という重い責任を負います。

先ほどの例では、①のみが該当します。

上記を踏まえますと、「請負」と「委託」の違いは、「委託」のほうがより広範囲なものを指し、「請負」は「請負」だけを指します。

「委託」は、仕事の完成責任を負う、法的責任の強い「請負」と区別するため、 「準委任」の意味で使用されていることが多いようです。
しかし、それでは、「委託」自体が「請負」の法的性質を含んでいることもありますので、「請負」と同じ性質のものともいえる場面もあり、明確に区別することはできません。

そのため、「委託」を大雑把に「準委任」と定義付けして、「請負」か「委託」かと区別するのではなく、「委託」を「請負」と「準委任」の法的性質に従って、上記の①~③に分類して、整理するのがよろしいのではと考えます。
こうすることで、民法の規定にもなじみますし、わかりやすいのではないかと思います。

※より詳細な情報をお知りになりたい方は、業務委託契約書の「請負」と「準委任(委任)」の違いをご覧ください。