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開発契約書の著作権の帰属(留保移転)を徹底解説!

最終更新日:2023年8月8日

 

業務委託契約書の著作権の帰属について、徹底解説をしております。

 

 

プログラムの著作権は誰に帰属するのでしょうか?

ソフトウェア開発の業務委託契約書では、プログラム(コンピュータが行うべき処理の手順を特定の言語で記述したもの)の著作権の帰属が問題になることがあります。



 

著作権は開発した受託者に原始的に帰属します

ソフトウェア開発において、委託者が開発費用を負担し、仕様を受託者に提示して、それに基づき受託者が開発します。そして、開発されたプログラムの著作権は実際に開発を行った開発会社に原始的に帰属します。

 

なお、実際にプログラムを創作しているのは受託者ですので、プログラムの著作権を原始的に委託者に帰属させること自体は、強行規定(契約当事者間で変更することができない規定)に反し、無効になる可能性があります。 

 

著作権がそのまま受託者に帰属することとする場合の条文例

本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙に留保される。

 

 

著作権を委託者に移転することが可能です

プログラムの著作権は、原始的に開発した受託者に帰属することになっていますが、プログラム著作権を受託者から委託者に移転させることは可能です。

 

しかし、何もしないと著作権は受託者に帰属しますので、移転させるためには、ソフトウェア開発業務委託契約書にその旨を記載する必要があります。

 

なお、委託者と受託者との間で、著作権の移転に関する適切な費用を開発費用の中に含めることが必要になってきます。

 

著作権を委託者から受託者に移転させる場合の条文例

本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙から甲に移転する。

 

 

著作者人格権は原始的に受託者に帰属します

著作者の人格的利益の保護を目的とする一身専属的な権利の総称を著作者人格権といい、具体的には以下の権利です。

  • 公表権(未公表の著作物を公衆に提供又は提示する権利)
  • 氏名表示権(著作物に対して、著作者名を表示するか、又は表示しないとする権利)
  • 同一性保持権(著作者の同意なしに改変できないとする権利)
  • 名誉声望保持権(著作者の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利)

 

著作権が受託者から委託者へ移転することなった場合でも、著作者人格権は一身専属性を有する権利であるため、移転できません。

 

著作権が委託者に移転されているのに、受託者によって、著作物を公表されたり、著作者名を表示されたりすることがあり、著作権を譲り受けた委託者にとっては、不利益で不安定な立場に置かれてしまいます。

 

これを避けるため、業務委託契約書に、「受託者は著作者人格権を将来にわたって行使しない」旨を規定することで、委託者はソフトウェアの権利を行使することが可能となります。

 

受託者が著作者人格権を行使しないことを定める条文例

乙はプログラムにかかる著作者人格権を行使しない。

 

 

汎用的なプログラムの著作権は留保しましょう

受託者がプログラム著作権を委託者へ移転することとなった場合、特段の記載がなければ、汎用的なプログラムも移転することになります。

 

しかし、汎用的なプログラムは、受託者が開発したもので、本来業務であるソフトウェアの開発には欠かせないものです。汎用的なプログラムまで移転した場合に、以後受託者が当該汎用的なプログラムを使用して、開発することになると、逆に委託者から訴えられることもあります。

 

そのため、プログラムの著作権を譲渡する場合には、汎用的なプログラムの著作権については受託者に留保するようにする必要があります。

 

汎用的なプログラムを留保する場合の条文例

本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙から甲に移転する。但し、本業務の開始前から乙が有する汎用プログラムについては、乙に留保される。

 

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