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取引基本契約書の作成方法

1.取引基本契約書とは?

「取引基本契約書」とは、発注者が同じ取引先から何度も反復して商品を購入するケースがあり、このような継続的取引に共通する基本的な取り決めを定めるための契約書であり、個別の取引の契約については、この「取引基本契約書」に基づいて、商品名、数量、単価など限られた事項を定めた注文書と請書を取り交わすなど簡易に成立することになります。
なお、継続的取引には、売買、請負、賃貸借、使用貸借、金銭消費貸借などの契約が複合的に混在していることがありますが、実務の経験からは、製品の売買や製造請負の取引であることが非常に多いです。

2.一般的な売買契約書や製造委託契約書との違いは?

取引基本契約書と一般的な売買契約書や製造委託契約書(基本契約ではない)とでは、ほとんど同じ条項が規定されますが、基本契約書に以下の内容が規定されている点で異なります。

 

個別の契約に適用させる基本となる事項を定める旨

個別契約の成立要件

個別契約で取り決めるべき規定

業務委託基本契約と個別契約との抵触があった場合の規定(どちらが優先するか)

 

3.取引基本契約書作成のポイント

 取引基本契約書作成のポイントをまとめてみました。どれも実務に長年携わってきた経験に基づいています。参考にしてください。

 

所有権の移転時期

取引において、商品の所有権は最終的に売主(受託者)から買主(委託者)に移転することになります。この点、民法における所有権の移転時期については、契約が成立した時に移転するとあります。
しかし、実際の取引で、契約が成立するとなると、まだ引渡もされておらず、場合によっては製造もされていないこともあるでしょうから、この定めは取引基本契約書の取引に適したものではありません。そこで、民法の規定を修正するため、「所有権の移転」時期を定める条項を置きます。通常、「納入した時点」、「納入にかかる検査が完了した時点」、「買主が商品の代金を支払った時点」のいずれかが考えられます。買主(委託者)は所有権の移転時期が早い方がいいので、「納入にかかる検査が完了した時点」を希望することが多く、売主(受託者)はなるべく遅い方がいいので、「買主が商品の代金を支払った時点」を希望することが多いです。ただ、実務で最も多く見受けられるのは「納入にかかる検査が完了した時点」です。

支払時期

支払は、取引基本契約書に定める条項中でも非常に重要な条項ですので、明確に定めておきたいところです。民法では、売主の商品引渡しと同時に支払うこととなっておりますが、実務では、その月の取引にかかる代金を合算して、翌月末日に支払うと規定することが多いです。また、取引基本契約書は、10年、20年など非常に長い期間継続することも多く、その間、経済情勢等が変化することもありますので、あえて取引基本契約書に規定せず、個別契約書に都度定めることも多くあります。

特別採用

特別採用とは、買主(委託者)による受入検査の結果、不合格となったものの、不良の程度が軽微であるため、買主(委託者)が使用できると認めるときは、売主(受託者)から一定額の値引きをしてもらったうえで、特別にその商品の納入を認めることをいいます。軽微な不良がある度に、返品等のやり取りをすることはかえって経費が掛かることがあり、契約当事者双方にメリットがありますので、実務では多く運用されているのです。

金型等の貸与

買主(委託者)は、商品の製造のため、売主(受託者)に対して、自ら金型、冶工具などを貸与することがあります。このように、金型等の使用による製造を委託する場合、金型等には、自らのノウハウが凝縮していることが多いですので、第三者に販売することのないようにするべきですし、それ以外にも、売主(受託者)に対して、金型等の複製・改造、譲渡・貸与を禁止するなどして、自らの有する金型等の権利を保護できるような規定を設けることが必要となります。

期限の利益喪失

期限の利益とは、取引基本契約書で言えば、買主(委託者)が契約に定める支払期限まで契約金額を支払わなくてもよいことで、期限が到来しないことによって得られる利益のことを言います。したがって、期限の利益があれば、支払わなくても、買主(委託者)は債務不履行責任を負いません。
ただ、売主(受託者)からすれば、買主(委託者)の経済状態が悪化している場合にでも、支払期限まで契約金額を支払ってもらえないということになると、買主(委託者)の経済状態が更に悪化してしまい、支払の請求ができず、債権を回収できないおそれが出てきます。
そこで、民法(137条)では、買主(委託者)が次に該当する場合、期限の利益を喪失することになっています。
(1)破産手続開始の決定を受けたとき。
(2)担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
(3)担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
しかし、買主(委託者)が上記の状態になるまで期限の利益があるとすると、売主(受託者)は債権を回収できる見込みがなくなってしまいます。
そのため、買主(委託者)に、次のような経済状態に悪化の兆しが現れた場合、期限の利益喪失条項を定めておくことが重要となるのです。
(1)手形又は小切手を不渡りとしたとき
(2)差押え、仮差押え、仮処分、競売、租税滞納処分その他公権力の処分を受けたとき
(3)破産手続開始、会社更生手続開始若しくは民事再生手続開始の申立てがあったとき、又は清算に入ったとき
なお、この期限の利益喪失事項に該当すると、相当期間を猶予しないですぐに契約解除される無催告解除事由と共通になることが多いです。

個別契約で定めるべき事項

個別契約で定めるべき事項は、取引の内容や取扱う商品によって異なりますが、必要に応じて次の事項を定めることとなります。

・発注日
・発注No.
・商品名
・商品番号
・仕様
・単価
・数量
・代金
・納入期日
・納入場所
・決済日
・決済方法
・梱包方法
・検査その他の受渡し条件
・原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法

※下請取引に該当する場合は、三条書面で定められた記載事項を規定しなければなりません。

契約の解除

契約の解除とは、取引基本契約書の場合、契約当事者間に有効に締結された契約の効力を将来に向かって終了させることをいいます。
契約の解除は、契約相手方が倒産などの信用不安状態に陥った場合に、債権を回収できなくなるおそれがあることから、取引基本契約書に定めておくべき条項です(約定解除)。
これによって、契約相手方に、支払停止、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、差押など一定の事由が発生した場合に、契約相手方の同意を得ることなく、一方的に契約を解消させることができるのです。
もともと、民法の規定では、契約相手方に債務不履行があれば、次の2つに該当する場合に契約解除ができるとされています。
(1)相手方に履行遅滞があった場合(民法541、542条)
(2)相手方に履行不能があった場合(民法543条)
しかも、上記(1)に該当するケースでは、支払期日までに支払がなければ、一旦、相当期間を定めて債務を履行する(●日までに支払う)よう相手方に催告し、相当期間経過後にも支払がなければ、契約解除の意思表示を改めて行い、契約解除ができます。この場合、催告と契約解除の意思表示について、2回の通知を必要とし、それも内容証明郵便で行うことが多く、手間、費用、時間がかかってしまいます。このように契約の解除に手間、時間をかけていると、債権の確保・回収が困難になってしまいますので、取引基本契約書に、契約当事者間で解除事由を予め定めておいて、それに該当した場合は、ただちに契約を解除することができることを規定しておくのです。
このように、取引基本契約書に、契約解除の規定を設けておくことで、すぐさま契約の解除が可能となり、債権の確保が容易となります。

受入検査

売主(受託者)の立場からすると、以下のポイントに留意して規定することができれば、有利に規定できます。

・検査基準
検査基準は売主(受託者)の定める基準又は買主(委託者)と売主(受託者)との間で定める基準のいずれかによると規定しておき、買主(委託者)の恣意的な基準を排除するような記載にしておくことが必要となります。

・検査期間
検査期間について定めなかったり、長めに定めてしまうと、買主(委託者)が検査をなかなか終了せず、検査合格も先延ばしされ、結果として代金を支払ってもらえなくなります。納入日からなるべく短めの期間を明確に定めておきたいです。また、予め定めた検査期間内に、検査の結果を通知されない場合、合否が判明せず不安定な立場を強いられるので、検査期間を経過した時点で、「みなし合格」とすることで、納入も完了し、代金の支払へとつながりますので、売主(受託者)としては、必ず定めておきたい条項となります。

・不合格理由
検査によって、買主(委託者)が不合格通知をする場合、その記載内容を事前に定めておかなければ、買主(委託者)から出された不合格通知が不明確で、不合格理由がわからないということにもなります。そのようなことがないよう、取引基本契約書において、「合理的かつ詳細な理由を明示して、検査の結果不合格となった旨通知するものとする」などと定めることが重要となります。

 

4.注文書と請書で契約できるの?

取引基本契約書では、継続的な取引に共通する基本的な取引条件が定められているだけで、具体的な権利義務関係が定められている訳ではありません。
そのため、個別の契約は、注文書と請書を取り交わすことによって行われています。注文書と請書の取り交わしも、申し込みと承諾の意思表示が合致していることになりますので、契約は有効に成立することになります。

注文書と請書は、A4用紙にプリントアウトされ、押印をすることが一般的ですが、売買であれば、取引の頻度が非常に高いですので、注文書と請書をメールでやり取りすることによって契約することもあります。
また、通常、取引基本契約書には、契約条項、目的物、仕様などが記載されていますので、この注文書と請書には、個別契約に必要な案件独自の情報が記載され、一般的な売買契約書や製造委託契約書よりもはるかに少ない情報の規定だけで済むことになります。

 

5.取引基本契約書の印紙

取引基本契約書は、原則として、売買と請負の両方に属することとなり、以下の5つの要件のすべてを満たせば、印紙税法上、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当することになり、4,000円の収入印紙を貼付する必要があります。

 営業者の間における契約であること

売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約であること

2以上の取引を継続して行うための契約であること

2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうちの1以上の事項を定める契約であること

電気又はガスの供給に関する契約でないこと


※取引基本契約書はほとんどのケースで、4,000円の収入印紙を貼付しているのではないでしょうか。
取引基本契約書を締結する相手には、買主(委託者)や売主(受託者)の両方がいて、契約書を数多く締結する傾向があり、1通4,000円の印紙税を負担するとなると、結構負担が重くなります。
ヒルトップでは、印紙税額を大幅に節税できる取引基本契約書の作成・リーガルチェックを行っておりますので、ご相談ください。

 

 

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行政書士 濱村 仁之

NTTグループでの契約法務を11年経験し、1,500通以上の各種契約書の作成・審査実績のある業務委託契約書作成の専門家です。契約書作成と継続的な法務支援を行い、個人への業務委託・偽装請負・印紙など何かと問題の多い業務委託契約のトラブルを予防します。中央大(法)卒。

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週刊文春2013年7月18日号
ワタミ社偽装請負の記事で
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