建設工事請負契約書を徹底解説!
最終更新日:2023年10月27日
建設工事請負契約書について、徹底解説をしております。
建設工事請負契約書とは
建設工事の取引を行うときに、発注者と受注者との間で締結される契約です。
民法上の請負契約で、受注者は、仕事の完成責任や契約不適合責任などを負います。
口頭契約や遡及契約
通常、一般的な契約は、口頭による約束でも有効ですが、建設工事請負契約書は、口頭でなく、書面または電磁的記録により締結することが求められています。
また、契約書の締結については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければならないこととされています。
したがいまして、建設工事請負契約書では、口頭契約や遡及契約とならないようにしないといけません。
建設業法による規定
建設業法には、第3章に、建設工事請負契約書に関する規定が わざわざ規定されています。その中でも、以下の2つの条項は非常に重要と言えますので、ご確認をお願いいたします。
建設業法第18条
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。建設業法第19条第1項本文
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
※先ほども申し上げましたとおり、書面による契約書締結を求めており、必要記載事項を記載するよう求めております。必要記載事項は以下に定めます。
建設業法による規定
建設工事請負契約書には、建設業法第19条第1項で以下の必要記載事項を規定することが求められています。
1.工事内容
2.請負代金の額
3.工事着手の時期及び工事完成の時期
4.工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
5.請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
6.当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
7.天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
8.価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
9.工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
10.注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
11.注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
12.工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
13.工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
14.各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
15.契約に関する紛争の解決方法
16.その他国土交通省令で定める事項
建設業法による規定
建設工事請負契約書の締結にあたり、以下に該当した場合には、建設業法違反となりますので、ご注意ください。
には、建設業法第19条第1項で以下の必要記載事項を規定することが求められています。
①建設工事の発注に際し、書面による契約を行わなかった場合
②建設工事の発注に際し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
③建設工事の発注に際し、請負契約の締結前に建設業者に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に契約書面を相互に交付した場合
建設工事の種類 | 建設工事の内容 | 建設工事の例示 | |
---|---|---|---|
1 |
土木一式工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。) | |
2 | 建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 | |
3 | 大工工事 |
木材の加工又は取り付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取り付ける工事 |
大工工事、型枠工事、造作工事 |
4 | 左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆喰、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又は貼り付ける工事 | 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
5 | とび・土工・コンクリート工事 | 1.足場の組立、機械機器・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立、工作物の解体(※1)等を行う工事 2.くい打ち、くい抜き及び場所内ぐいを行う工事 3.土砂等の堀削、盛上げ、締固め等を行う工事 4.コンクリートにより工作物を築造する工事 5.その他基礎的ないし準備的工事 |
1.とび工事、ひき工事、重量物の揚重運搬配置工事、配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事、工作物解体工事※1 2.くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ちぐい工事 3.土工事、掘削工事、根切工事、発破工事、盛土工事 4.コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事 5.地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラフト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事 |
6 | 石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取り付ける工事 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 | |
7 | 屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 屋根ふき工事 | |
8 | 電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 |
発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
9 | 管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 |
冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事 |
10 | タイル・れんが・ブロック工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事 |
11 | 鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
12 | 鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 | 鉄筋加工組立工事、鉄筋継手工事 |
13 | 舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
14 | しゅんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 | しゅんせつ工事 |
15 | 板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
16 | ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 | ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事 |
17 | 塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
18 | 防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シ-リング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
19 | 内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
20 | 機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車場設備工事 |
21 | 熱絶縁工事 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事 |
22 | 電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機器設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 | 有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
23 | 造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事 |
24 | さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
25 |
建具工事 |
工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 |
金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
26 |
水道施設工事 |
上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 |
取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
27 | 消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
28 | 清掃施設工事 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
29 | 解体工事 | 工作物の解体を行う工事 | 工作物解体工事 |
建設業許可の必要ない工事
建設業の許可が必要のない工事も存在します。
それは、建設業法上「軽微な工事」と呼ばれているものであり、具体的には以下の工事がそれに該当します。
軽微な工事
①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事- 「木造」…建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
- 「住宅」…住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
②建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
このような「軽微な工事」を行う場合は、建設業の許可を受ける必要はありません。
ただ、このような許可のない業者でも契約書を締結する必要はあるのでしょうか。
結論から申し上げますと、建設業許可を受けているか否かにかかわらず、建設工事の取引を行う場合、建設業法第19条が適用されます。
そのため、建設業許可のない業者であっても、契約書を締結する必要があるということになります。
建設工事請負契約書の印紙
建設工事請負契約書は、文字どおり請負契約であり、第2号文書となりますが、記載金額が100万円を超えるもので、2014年4月1日から2024年3月31日までの間に作成されるものになります。以下には軽減税率のみ掲載しております。
課税標準及び軽減税率 | 契約金額 | 軽減税率 |
---|---|---|
百万円を超え二百万円以下のもの | 四百円 | |
二百万円を超え三百万円以下のもの | 五百円 | |
三百万円を超え五百万円以下のもの | 一千円 | |
五百万円を超え一千万円以下のもの | 一万円 | |
一千万円を超え五千万円以下のもの | 二万円 | |
五千万円を超え一億円以下のもの | 六万円 | |
一億円を超え五億円以下のもの | 十万円 | |
五億円を超え十億円以下のもの | 二十万円 | |
十億円を超え五十億円以下のもの | 四十万円 | |
五十億円を超えるもの | 六十万円 |
※建設工事の請負に伴って作成される請負契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が100万円以下のもの(契約金額の記載のないものを含みます。)は、軽減措置の対象となりません(200円)。また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。