店舗運営委託契約書の問題点
少し前に、店舗の運営や経営を店長に委託する「店舗経営委任契約書」の依頼を受けました。
フランチャイズ契約で許諾を受けた権利を再委託するイメージで、店長には自らの責任で経営してもらい、売上から、数%の額と店舗使用料を委託者に支払うというものでした。
店長の裁量があるので、「労働者性」もなく、業務委託契約書として作成することにしました。
ところが、よくよく調べてみると、問題点が。
この契約では、委託元が店長から売上の数パーセントのほかに、店舗使用料や賃料を定額で受領することになっていて、建物賃貸借契約書とみなされることになるのです。
建物賃貸借契約書とみなされると、借地借家法の適用を受けることになり、委託者(賃貸人)から、契約期間が満了したとしても、簡単に契約を終了させることができません。
※店長(賃借人)に、賃料不払いなどの契約解除事由に該当すれば、契約を解除することはできます。
これは、期間の定めの有無で違いがありますので、以下にまとめてみました。
・期間の定めのある賃貸借契約の場合(例えば、契約期間が2年の定めがある)
賃貸人は、契約期間満了の1年前から6か月前までの間に(契約期間が1月1日~12月31日の場合、1月1日~6月30日までに)、更新拒絶の通知を出さなければならず、この更新拒絶には正当事由が必要とされます。
・期間の定めのない賃貸借契約の場合(例えば、期間を定めないことはあまりないので、契約期間が更新した後の期間)
賃貸人は、いつでも解約の申入をすることができ、解約申し入れから6か月経過後に、契約は終了しますが、この解約申し入れにも、正当事由が必要とされます。
両方のケースで正当事由が出てきましたが、正当事由とは、賃貸人が建物を建て替えたり、自ら居住したりするなどの事由が該当することが多いですのが、これはハードルが高いです。
特に、「店舗運営委託契約書」「店舗経営委託契約書」では、委託元が転貸(又貸し)していることが多いので、正当事由に該当しない可能性が高いと言えます。
このように、表向きは委任契約書というタイトルですが、実体は「建物賃貸借契約書」となり、委任者としては、契約を簡単に終了させられないといったことになりますので、注意が必要です。