偽装請負とは?業務委託契約と派遣契約を徹底解説!!
最終更新日:2023年8月8日
労働者派遣でありながら、請負契約を装う「偽装請負」の問題点や疑問点、適切な業務委託契約書にするための基準について、詳細解説しております。
受託者の事業所での業務委託は「偽装請負」?!
業務委託で受託者(受注する側、労働者を雇用する側)の労働者を、委託者(発注する側)の事業所や委託者の指定する場所において業務を行わせる場合、「偽装請負」に該当することがあります。
「偽装請負」とは、実態として、労働者派遣でありながら、契約書上「請負契約」と偽って、職業安定法や労働者派遣法等に定められている使用者としての責任や義務を免れようとする行為をいいます。
「業務委託」か「派遣」かの判断基準があります。
受託者の労働者を委託者の事業所や委託者の指定する場所で業務を行わせる業務委託契約を締結して、以下に該当する事項を受託者が行う場合、適正な業務委託契約として認められますが、これを委託者が行う場合、労働者派遣契約とみなされることがあります。
これは、厚生労働省により「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(告示37号)」として定められています。
1.業務の遂行方法に関する指示その他の管理を受託者自ら行うこと
受託者の労働者への業務の指示は、委託者が直接行ってはならず、受託者の実施責任者を通じて行います。
また、受託者の労働者からの業務の終了報告を委託者に直接行わせてはなりません。
2.業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を受託者自ら行うこと
受託者の労働者への業務の遂行に関する評価等は、委託者が直接行ってはなりません。
3.労働者の始業及び終業の時刻等に関する指示その他の管理を受託者自ら行うこと
受託者の労働者の勤怠管理は受託者が行い、委託者が行ってはなりません。
また、委託者が受託者の労働者から直接欠勤、遅刻・早退等に関する連絡を行わせてはなりません。
※委託者による単なる把握は問題ないとされています。
4.労働者の労働時間延長又は労働者の休日労働における指示その他の管理を受託者自ら行うこと
委託者が受託者の労働者に対して、直接残業や休日出勤を依頼してはなりません。これは受託者の実施責任者が行います。
※委託者による労働時間等の単なる把握は問題ないとされています。
5.労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を受託者自ら行うこと
受託者の労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理は、委託者が直接行ってはならず、受託者の実施責任者が行います。
業務の指示については、委託者は、受託者の実施責任者を通じて行う必要があります。
6.労働者の配置等の決定及び変更を受託者自ら行うこと
委託者が労働者の配置等の決定及び変更を行ってはならず、受託者の実施責任者がこれを行います。
7.業務の処理に要する資金につき、すべて受託者自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること
業務の処理に必要となる資金は、受託者が準備します。
8.業務の処理について、法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと
受託者は、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負う必要があります。
9.次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと
(1)受託者が自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること
(2)受託者が自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること
実際、上記のいずれかを委託者が自ら行っている事項も多いのではないでしょうか。
これらに該当しないように対応することが必要です。
「偽装請負」の疑問点
「偽装請負」と判断されてしまう可能性のある疑問点について、以下のとおりまとめましたので、参考にしていただければと思います。
1.時給による委託費の算出
受託者の労働者を委託者の事業所や委託者の指定する場所で業務を行わせる場合、「仕事を完成させ目的物を引き渡す」形態の「請負」に関する業務委託契約書において、委託費を時給で算出すると規定しているものをよく見かけます。
これは、「業務の委託」ではなく、単なる「労働力の提供」とみなされ、「偽装請負」となる可能性が高いと言えます。
また、時給で算出することで、本来であれば、勤怠管理や時間外管理は、受託者の実施責任者が行うべきなのですが、委託者が受託者の労働者に対して、勤怠管理や時間外管理を行うことにつながりかねず、「業務委託」になじみませんので、注意が必要です。
2.実施責任者が常駐していない場合
適正な業務委託となるためには、委託者が受託者の労働者に直接指揮命令せず、受託者の実施責任者が受託者の労働者に指揮命令をする必要がありますが、受託者の実施責任者は、委託者の事業所に必ず常駐していないといけないのかといったご質問をいただくことがあります。
結論からいうと、必ずしも、受託者の実施責任者も常駐しなければならないという訳ではありません。
委託者と受託者の実施責任者との間で、しっかりとした連絡体制をあらかじめ整備しておき、受託者の実施責任者が外部にいても、受託者の労働者に対し、労働時間管理や業務遂行に関する指示等を自ら確実に行える体制を整えておけばいいこととされております。
3.パーテーション等による区分
委託者の事業所内において、受託者の労働者が作業する場合、委託者と受託者の労働者とをパーテーション等で区分しないと「偽装請負」になるのではないかというご質問をいただくことがあります。
確かに、パーテーション等で区分がなく、委託者と受託者の労働者の混在することが原因で直接指揮命令につながる場合、「偽装請負」とみなされることがあります。
しかしながら、受託者が自己の労働者に対する指示その他の管理を自ら行い、独立して業務を処理していれば、適正な業務委託とされますので、必ずしもパーテーション等で区分されなければならないという訳ではありません。
4.CCメールや打合せへの出席
委託者から受託者の労働者へのCCメールの送信は可能か、また、委託者が受託者の労働者を委託者の主催する打合せに出席できるかといった問題もあります。
この場合は、どちらもOKです。
但し、これらを通じて、委託者から受託者の労働者に指揮命令があると「偽装請負」とみなされますので、ご注意ください
5.受託者の労働者への技術指導
委託者が受託者の労働者に対して指揮命令をしてはいけませんが、技術指導をできるのかという問題もあります。
原則的に、委託者から受託者の実施責任者に対して、技術指導が行われるべきで、受託者の労働者への技術指導はできません。
但し、以下のようなケースで、委託者の監督の下行われれば、偽装請負と判断されません。
・受託者の労働者が委託者から新たな設備を借り受けた後初めて使用する場合、委託者が労働者に補足的な説明を行うとき
・委託者が安全衛生上緊急に対応する必要のある事項について、委託者が受託者の労働者に対して指示を行うとき
※一部、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集を参照
「偽装請負」のパターン
「偽装請負」の典型的なパターンは以下の4つになります。
代表型
請負と言いながら、委託者が業務の細かい指示を受託者の労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしています。偽装請負によく見られるパターンです。
形式だけ責任者型
形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、委託者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、委託者が指示をしているのと実態は同じです。単純な業務に多いパターンです。
使用者不明型
業者Aが業者Bに仕事を発注し、業者Bは業者Aから請けた仕事を別の業者Cにそのまま出します。業者Cに雇用されている労働者が業者Aの現場に行って、業者Aや業者Bの指示によって仕事をします。一体誰に雇われているのかよく分からないというパターンです。
1人請負型
実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋します。ところが、業者Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです。
「偽装請負」の可能性のある契約の見直し
「偽装請負」の可能性のある業務委託契約については、以下の見直しをご検討ください。
業務委託契約から労働者派遣契約への見直し
必要であれば、労働者派遣事業の許可申請を行います。
適正な業務委託契約への見直し
上記2.「「業務委託」か「派遣」かの判断基準」に従った業務委託契約への見直しを行います。
特に、労働者への指示は受託者が直接されることが必要です。
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