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販売店契約書(特約店・ディストリビューター)を徹底解説!

最終更新日:2024年6月5日

 

販売店契約書(特約店・ディストリビューター・再販型)について、徹底解説をしております。

 

 

販売店契約書の概要

販売店契約とは、メーカーやサービス提供者などの供給者(売主)が販売店(買主)に商品、サービスやライセンスを販売し、販売店が供給者から購入した商品、サービスやライセンスを自己の名で顧客に転売するために締結する契約です。

 

なお、販売店契約は特約店契約とも呼称されることがあります。

 

※供給者の名で売買取引の取次、代理などを行い、取引高に応じた手数料を取得する契約である代理店契約書のコンテンツはこちらです。

 

 

 

 

販売店契約書の特徴

販売店契約は、継続的な売買取引ですので、売買基本契約書や取引基本契約書に近い形となります。

そのため、個々の取引は、個別契約書や注文書・注文請書のやり取りで契約締結されることとなります。

 

ただ、単なる売買基本契約書とは異なり、供給者の販売店への協力義務、商標権の利用、独占的販売権の有無、販売促進義務を取り決めるなど、商品、サービスやライセンスの販売の販路の確保・維持・拡大を目指した契約です。

 

供給者から販売店への縛りが強いと、独占禁止法に定める「不公正な取引方法」に該当することがありますので、注意が必要です。

 

また、販売店は自己のリスクで商品を供給者から購入して、顧客に転売しますので、商品販売リスク、商品代金の回収リスク及び商品在庫のリスクを負うことになります。

 

もちろん、顧客から商品に対するクレームがあれば、顧客との売買契約当事者として、それに対する責任を負うことになります。

 

なお、供給者から購入した商品を顧客に転売することによって生じる転売差益が販売店の報酬(利益)となります。

 

 

 

不公正な取引方法

 販売店契約は、「拘束条件付取引」、「再販売価格の拘束」、「排他条件付取引」などの「不公正な取引方法」に該当することがあります。「不公正な取引方法」は、公正な競争を阻害するおそれがある場合に禁止されますが、以下に、販売店契約で問題となる事例を挙げましたので、ご参考にしてください。

 

インターネット販売を制限すること

 インターネット販売を制限することは、不公正な取引方法(拘束条件付取引)として違法となることがあります。

供給者が販売店への販売方法を制限することが許されるのは、「他の販売店にも同等の条件が課され」、かつ「以下の当該商品の適切な販売のための合理的な理由があること」とされています。

  • 商品の安全性の確保
  • 品質の保持
  • 商標の信用の維持

「他の販売店にも同等の条件が課され」とありますので、A社だけインターネット販売を禁止し、B社には許容するというのはいけません。

 

また、販売店への販売方法の制限が許される場合でも、結果的に販売価格の制限を行えば、許されませんので、注意が必要です。

 

特に、インターネット販売を禁止するのは、販売店の安売りを制限することではないでしょうか。このような動機であれば、拘束条件付取引に該当し、インターネット販売の制限はできないということになります。

販売地域を制限すること

供給者が販売店に対して一定の地域を主たる責任地域と定めることや販売拠点の設置場所を一定地域に限定することは原則認められています。

しかし、割り当てられた一定の地域外で販売を禁止することや一定の地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限することは、不公正な取引方法(拘束条件付取引)として違法となることがあります。なお、販売地域の制限については、以下の4つの類型が定められています。

以下の[1]責任地域制や[2]販売拠点制は原則認められています。

 

1.責任地域制
供給者が販売店に対して、一定の地域を主たる責任地域として定め、当該地域内において、積極的な販売活動を行うことを義務付けること(主たる責任地域を設定するのみであって、下記[3]又は[4]に当たらないもの)。

 

2.販売拠点制
供給者が販売店に対して、店舗等の販売拠点の設置場所を一定地域内に限定したり、販売拠点の設置場所を指定すること(販売拠点を制限するのみであって、下記[3]又は[4]に当たらないもの)。

 

3.厳格な地域制限
供給者が販売店に対し一定の地域を割り当て、地域外での販売を制限すること。「市場における有力なメーカー」が行う制限であり、かつ「商品の価格が維持」されるおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となります。

 

4.地域外顧客への販売制限
供給者が販売店に対し一定の地域を割り当て、地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限すること。これによって「商品の価格が維持」されるおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となります。

販売店の販売価格を指定すること

供給者は、自社商品の安売りを防止するため販売店に対して、販売店が顧客に販売する自社商品の販売価格を指定することは、「再販売価格維持」といい、競争手段の重要な要素となる販売価格を拘束し、販売店間の公正な競争を妨げることから、独占禁止法上禁止されています(ただし、書籍、雑誌、新聞、音楽ソフトなどの著作物は指定再販商品として除かれています)。


また、供給者が希望小売価格を定めることは、単なる目安程度であれば問題ありませんが、これを守るよう圧力をかければ、「再販売価格維持」となります。

競合他社の商品の取り扱いを制限すること

販売店に対して、供給者が販売する商品のみを取り扱い、競合関係にある他社の商品を取り扱わないことを条件として取引を行うことは、原則として認められていますが、以下の2つの要件に該当すると、不公正な取引方法のうち、排他条件付取引(排他的供給契約型)として違法となります。

  • シェアが10%以上または上位3位以内の有力供給者であること
  • 不当に競争相手の取引の機会や流通経路を奪ったり、新規参入を妨げるおそれがあること

 

 

 

販売店契約書作成のポイント

 販売店契約書作成のポイントをまとめてみました。特に、販売店契約書は売買契約の一種ですので、売買に関する条項が必要となることがポイントです。

契約不適合責任

売買では、2020年4月1日の民法改正により、従来までの「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改正されました。

 

売買契約において、引渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合)ときは、買主は、売主に対し、履行の追完請求(目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡し)、報酬の減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができます(民法562、563、564)。

 

買主は、契約不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しないときは、売主の契約不適合責任を追及できないとしています(民法566)。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この限りではないとしています(民法566但書)。

 

この契約不適合責任期間は、任意規定であり、民法の規定では、売主の責任が長期に及ぶことから、契約当事者が合意のうえで、「契約不適合を知った時から」でなく、「検査に合格した時から」としたり、「1年」を「6か月」とするなど短期間に修正することができます。

 

そのため、契約不適合責任について、自社の方針を社内しっかりと定めておくことが重要です。もし、その方針と異なる内容の契約書を提示された場合は、契約相手としっかりと交渉をしましょう。

所有権の移転時期

個別契約で供給者から販売店に納入された納入品の所有権がどの段階で販売店に移転するのかを明確に規定しておきます。


「納入した日」、「検査に合格した日」、「代金支払い日」が考えられますが、「検査に合格した日」をもって所有権を移転することとするのが実務では多くみられるパターンです。

また、納入品の納入前に、供給者・販売店のいずれの責任でもなく、納入品が毀損又は滅失した場合、その損害(危険)をどちらが負担するかということを危険負担といいますが、民法は特定物に関する売買契約においては、債権者主義をとっており、販売店が危険を負担することになりますが、実務では、これを修正し、債務者主義をとり、販売店でなく供給者が負担することを規定することが多いです。

 

なお、ここでいう損害(危険)を負担するとは、供給者が納入品を補修、再製作等しなければならず、補修、再製作等により発生する追加費用等の負担することを意味します。

継続的な契約

販売店契約は継続的な契約です。複数年契約の場合もありますが、通常1年契約であることが多く、更に、事務処理軽減のため、自動延長条項を定めておくこともあります。販売店契約は、契約条項が多いため、契約相手がそれをしっかりと守ってくれるのかを見定めるためにも、短めに設定しておいてもいいかもしれません。

報告

販売店契約では、供給者から販売店に以下の内容を報告させることが多いです。
販売・在庫状況を把握するためだったり、商品やその市場の情報を得ることによって、供給者側の製造や供給の参考にするためです。

  • 販売数量
  • 在庫数量
  • 来期の販売見込み

  • 商品の評判・苦情内容
  • 商品の市場情報

この報告は、毎月、3か月、半年に1回報告することが多いようです。

販売店契約終了後の取り決め

販売店契約は、供給者と販売店とが売上拡大のために協業していくことから、いざ契約を終了するとなると、終了にあたり、許諾した権利の使用を中止したり、在庫をどうするかなどの問題が出てきます。そこで、販売店契約にも以下の取り決めをしておくことで、契約終了時の取り扱いをスムーズにすることが可能になるのです。

  • 販売店が持っている在庫を販売することができるか?供給者が在庫を買い取るか?

     

  • 供給者が販売店に許諾した商標権(商号・ロゴなど)の使用をただちに中止するか?

     

  • 供給者が販売店に貸与した貸与品・提供した提供品をただちに供給者に返還するのか?

  • 個別契約に基づく売買取引は存続するのか?
  • 販売店が供給者から請求されている代金をただちに支払う必要があるか?

このほかにも守秘義務が存続するかなどの問題もあります。個別に検討する必要があります。

変更契約

販売店契約は継続的な契約であり、契約期間も長期にわたり、1年契約でも、自動延長が複数年繰り返されるというケースが多くあります。そのため、単価や条件などを変更契約を締結することで変更することになります。

変更契約

販売店契約は継続的な契約であり、契約期間も長期にわたり、1年契約でも、自動延長が複数年繰り返されるというケースが多くあります。そのため、単価や条件などを変更契約を締結することで変更することになります。

 

 

 

販売店契約書の印紙

販売店契約書は、売買の継続的な取引の基本契約書であり、そのほとんどが第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当することとなります。

 

そのため、4,000円の収入印紙を貼付する必要があります。

 

なお、収入印紙を貼付していない場合、販売店契約の有効性に影響がある訳ではありませんが、印紙税額の3倍の過怠金がかかりますし、企業としての信用力の低下となる場合も想定されますので、ご注意ください。

 

 

 

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