開発契約書の著作権の帰属(留保移転)を詳細解説!
最終更新日:2025年12月8日
本ページでは、ソフトウェア開発契約における著作権の帰属(留保移転)について、プログラムの著作権は誰に帰属するのか、移転する場合はどのような条文が必要なのか、契約実務で注意したい点を詳細解説しています。
プログラムの著作権は開発した受託者に原始的に帰属します
ソフトウェア開発の業務委託契約書では、プログラム(コンピュータが行うべき処理の手順を特定の言語で記述したもの)の著作権の帰属が問題になることがあります。
ソフトウェア開発において、委託者が開発費用を担し、仕様を受託者に提示して、それに基づき受託者が開発します。そして、開発されたプログラムの著作権は実際に開発を行った開発会社に原始的に帰属します。
なお、実際にプログラムを創作しているのは受託者ですので、プログラムの著作権を原始的に委託者に帰属させること自体は、強行規定(契約当事者間で変更することができない規定)に反し、無効になる可能性があります。
ソフトウェアは受託者が作成するため、開発されたプログラムの著作権は、原則として受託者に原始的に帰属します。委託者が費用を負担し、仕様を提示していても、著作権そのものが最初から委託者に帰属するわけではありません。
なお、作成主体は受託者であるため、契約で著作権を「原始的に委託者に帰属させる」と定めることは、強行規定に反し無効となる可能性があります。
著作権がそのまま受託者に帰属することとする場合の条文例
本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙に留保される。
著作権を委託者に移転することが可能です
プログラムの著作権は、原始的に受託者に帰属しますが、契約で合意すれば、委託者に移転することも可能です。
ただし、何もしなければ著作権は受託者に留保されるため、移転する旨を契約書に明記する必要があります。
また、著作権を移転する場合は、移転に伴う適切な対価を開発費用の中に含めることが望ましいです。
著作権を委託者から受託者に移転させる場合の条文例
本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙から甲に移転する。
著作者人格権は移転できません
著作者人格権は、著作者本人の人格的利益を保護するための権利で、一身専属性を持つため移転できません。具体的には以下の権利です。
- 公表権(未公表の著作物を公衆に提供又は提示する権利)
- 氏名表示権(著作物に対して、著作者名を表示するか、又は表示しないとする権利)
- 同一性保持権(著作者の同意なしに改変できないとする権利)
- 名誉声望保持権(著作者の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利)
著作権が委託者に移転されているのに、受託者によって、著作物を公表されたり、著作者名を表示されたりすることがあり、著作権を譲り受けた委託者にとっては、不利益で不安定な立場に置かれてしまいます。
著作権が委託者に移転しても、受託者が著作者人格権を行使すると、委託者が自由に利用できなくなる可能性があります。そのため、契約では 「受託者は著作者人格権を行使しない」旨の条項を入れることが必要です。
受託者が著作者人格権を行使しないことを定める条文例
乙はプログラムにかかる著作者人格権を行使しない。
汎用的なプログラムの著作権は留保する必要があります
著作権を委託者に移転する場合でも、受託者が元々保有していた汎用的なプログラムまで移転させてしまうと、受託者が他の案件で自社開発するのに使用できなくなり、かえって不都合が生じたり、紛争につながります。
そのため、汎用的プログラムについては受託者に留保する と明記することも多く見られます。
プログラムの著作権を譲渡する場合には、汎用的なプログラムの著作権については受託者に留保するようにする必要があります。
汎用的なプログラムを留保する場合の条文例
本契約に基づき納入されたプログラムにかかる著作権は、乙から甲に移転する。但し、本業務の開始前から乙が有する汎用プログラムについては、乙に留保される。
まとめ
ソフトウェア開発契約では、プログラムの著作権が誰に帰属するかを強く意識する必要があります。
著作権は原則として開発した受託者に原始的に帰属するため、委託者が権利を取得したい場合は、契約書に移転条項を明記しておく必要があります。
また、著作者人格権は移転できないため、不行使条項を設けておかないと、後になって権利行使の余地が残ってしまう点にも注意が必要です。
さらに、受託者が従前から有している汎用プログラムまで委託者へ移転させてしまうと、受託者に大きな不利益が生じる可能性があります。
そのため、汎用部分は留保し、契約で開発した部分のみを移転するなど、境界線を明確にしておくことが重要といえます。
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