ソフトウェア(システム)保守契約書を徹底解説! - 契約書の作成リーガルチェックは企業法務経験豊富な行政書士へ

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ソフトウェア(システム)保守契約書の書き方を徹底解説!

最終更新日:2025年12月9日

ソフトウェア・システムの保守契約書について、豊富な保守契約実務の経験に基づき、徹底解説をしております。

 

※ハードウェア、機器、装置などの保守契約書については、こちらをご確認ください。

 

 

 

ソフトウェア保守契約書の概要

「ソフトウェア保守契約書」とは、ソフトウェア開発契約・プログラム製造請負契約などで納入された成果物や、パッケージソフトのライセンス契約で使用許諾されたソフトウェアに、不具合(バグ)が生じた場合、その調査や修正を行うため、予め締結しておく契約書となります。

 

具体的には、以下の対応を行うものです。 

  • 不具合(バグ)の調査や修正
  • 修正版のプログラムの提供
  • ソフトウェアの不具合や使用方法に関する問合せ回答(Q&A対応)

なお、ソフトウェア保守契約書は、「業務委託契約書」「サービス提供契約書」「ライセンス契約書(ライセンス規約)」などのタイトルで、締結されることが多く、さまざまなタイトルです。

 

※保守契約を、「開発・納入型」の業務委託契約書や請負契約書で結んでおられる例、開発から保守まで1つの契約書で結ばれる例が非常に多く見受けられます。実態とかけ離れた契約書になるだけでなく、負う必要のない責任まで負ってしまい、不利になる可能性が高くなります。

専門家にご相談ください。

 

 

 

ソフトウェア保守契約書の特徴

 ソフトウェア保守契約書の特徴は以下のとおりです。

  • 既に運用中のソフトウェアが対象です。
  • ソフトウェア(プログラム)に手を加えることがあるので、ほとんどのケースで、開発した会社が対応します。
  • ソフトウェア開発の契約不適合責任期間経過後であれば、不具合対応できないため、保守契約が必要。
  • ソフトウェア保守の内容は、問合せ対応、不具合の原因調査や不具合対応などです。
  • 締結時点で不具合等はなく、不具合等に備えて予め契約しておくものです。

 

 

 

ソフトウェア保守契約書の契約の性質

ソフトウェア保守契約書を作成・リーガルチェックするにあたり、まずは保守業務や保守サービスがどんな内容かを把握することが重要です。

 

保守の内容を把握することで、以下のとおり、契約の性質を判断します。

 

  • ・準委任契約として扱うか
  • ・一部に請負契約の要素が含まれるか

 

これを把握することで、請負契約の要素を組み込むかが決まり、結果として、契約条項も定まります。

 

請負契約の要素を組み込むと、収入印紙を貼付する必要が出てきます(電子契約の場合はそもそも印紙不要です)。

 

以下に、ソフトウェア保守契約書の業務内容やサービス内容を契約の性質ごとに分類しました。

準委任契約

・ソフトウェアの不具合を修正するよう努めること
・ソフトウェアの不明点・使用方法・技術的問題点に関する問い合わせへの電話電子メールによる回答

 

※上記のように、仕事の完成責任を負わない業務は、「準委任契約」となり、不課税文書となり収入印紙の貼付は不要です。

請負契約

・リモートやオンサイトによるソフトウェアの不具合の修正(仕事の完成義務を負うもの)

 

※保守契約は「準委任契約」と考えていらっしゃる方が非常に多いですが、必ずしもそうとは限りません。
※仕事の完成義務を負う保守業務であれば、「請負契約」となりますので、ご注意ください。この場合は、保守契約書に収入印紙も必要となります。

情報提供契約

・マイナーバージョンアップ情報の提供(適用はユーザみずから実施)

  

 

 

ソフトウェア保守契約書作成のポイント

ソフトウェア(システム)保守契約書を作成するうえで、押さえておきたいポイントを以下にまとめてみました。いずれも保守契約実務の現場でのトラブルや問い合わせ対応を数多く経験してきた中で、特に重要であると感じている部分です。

また、保守契約書は開発契約書とは違った視点で対応する必要がありますので、作成時の注意点として参考にしてください。

保守の対象

保守の対象を明確に定めましょう。

どのソフトウェアなのか、バージョンは記載しているか、OSやミドルウェアはどうなのか、具体的に定めないと後日紛争が生じることにもなりかねません。

ソフトウェアの不具合(バグ)対応

ソフトウェア(システム)保守で最も重要といえるのがソフトウェア不具合(バグ)対応です。不具合といっても原因はさまざまで、保守契約上での取り扱いが異なりますので、最初に分類しておくことが重要です。一般的には、以下の3つに分類されます。

 

①開発バグ
 開発時から潜在していたものの、後になって発覚した不具合です。
 ※契約不適合期間内であれば無償対応になります。期間を経過していても、保守契約がある場合、その保守範囲で対応できるケースが多いです。

②運用環境の変化
 OS更新・DBバージョン変更・NW変更など運用環境の変化による不具合です。

 ※保守契約がある場合、その保守範囲で対応できるケースが多いですが、内容によっては追加費用になることもあります。

③利用者起因
 操作・設定変更・データ投入ミスなど利用者に起因する不具合です。

 ※保守契約がある場合、その保守範囲で対応できるケースが多いですが、内容によっては追加費用になることもあります。

 

このように、不具合は一見同じように見えても原因が異なります。
これまで保守契約書に数多く携わってきて、保守範囲(追加費用がかかるか)があいまいな契約書が非常に多かったのですが、あいまいにするとトラブルにつながりやすいです。保守契約書で、「有償となる場合の不具合の原因」を明確にしておくことが非常に重要であるといえます。

継続的な契約

保守契約は継続的な契約です。

複数年契約の場合もありますが、通常1年契約であることが多く、更に、契約事務処理軽減のため、自動延長条項を定めておくことが多いです。

報告

保守契約では、納入品を納入することがありませんので、納入としての報告書でなく、請負の性質がある場合、業務(=仕事)の完成したことを証する書面として、委任の性質がある場合、報告の意味合いが異なり、委任された業務の事務処理を報告する書面として、受託者が委託者に報告書を提出します。

請負の性質がある場合、委託者がこれを検査して、仕事が完成したことをチェックし、合格した場合は、検査に合格したこととなります。
また、委任の性質がある場合、単なる確認程度のものとなりますので、検査の手続きを踏まないことになります。

支払

保守契約は、継続的な契約であるが故に、以下のとおり、様々な支払パターンがあります。

  • 一括払い(前払い・後払い)
  • 月払い(前払い・後払い)
  • 四半期払い(前払い・後払い)

  • 半年払い(前払い・後払い)
  • 1年毎払い(前払い・後払い)※複数年契約の場合

などがあります。

この他にも、1年目と2年目で期間や金額が異なることもありますし、1年目は0円、2年目は通常の金額ということもあります。当事務所では、様々な取り決めに対応可能です。

インシデント

契約期間中に業務の上限回数を定めておき、その回数を超えたら、インシデント(チケットのようなもの)を購入するという対応をインシデント対応ということがあります。

これは無制限に業務を実施するのではなく、想定される回数や過去の実績ベースで算出して、経費の節減につながるという効果があります。

なお、契約期間満了時に、インシデントがまだ残っている場合でも、次年度以降には繰り越されないとすることが多いです。

非定額業務(オンサイト)

実施することが想定されないものの、保守内容や単価などを定めておき、実際に、そのような保守を行うと、あらかじめ定めておいた単価で算出した料金が発生するというものです。

特に、オンサイト対応を実施した場合に、別料金となることが多く、契約金額とは別にオンサイト料金を支払うということになります。

これも当初の契約金額にオンサイト料金を乗せていないので、実際にかかった場合にだけ支払えばよいので、経費節減につながります。

保守対象外業務

天災地変など不可抗力で発生した業務、保守業務の対象外となる業務、また契約書に記載していない業務を実施した場合は、別途料金がかかるとするものです。

何もなければ保守業務の範囲が広くなってしまいますので、このような規定を設けることで、業務の線引きが可能となります。

また、特に受託の場合、ユーザの立場のほうが強いケースが多いですから、あらかじめ明記することで別途料金がかかると主張しやすくなります。

追加開発は保守契約で行わない

バージョンアップなど現在の仕様と異なる追加開発をする場合も保守契約で処理したいというケースもあります。実際、運用中の契約で実施する訳ですから、新たに契約するよりも、そのほうが事務処理稼働なども軽減されます。

しかし、保守契約は保守契約です。著作権の帰属、納入及び検収など開発契約に必要となる条項がありませんので、対応できません。

必ず機能追加などの開発契約を締結するようにしましょう。

変更契約

保守契約は継続的な契約であり、自動延長が5,6年繰り返されるということがほとんどです。

そのため、契約金額、単価、条件などを変更契約を締結することで変更することになります。この場合、収入印紙が問題となってきます。

「秘密情報」や「個人情報」の遵守に関する覚書

継続的に「秘密情報」や「個人情報を取り扱うことになりますので、その取扱いや情報事故が生じた場合の手続き、損害賠償などを取り決めた「秘密情報」や「個人情報」に関する覚書を、保守契約書とは別に締結することが多いです。

これは、情報漏えい事故があると、某B社の例を見ても分かるように、ユーザが莫大な損害を被ることになりますので、大企業から受託する場合、特に増えております。

一般的に、これを遵守していないとは言えない内容ですので、委託先としては受け容れざるを得ないのですが、よく見ると会社として対応できない内容もありますので、委託元から提出される書式をしっかりチェックする必要があります。

 

  

 

 

 

 

ソフトウェア保守契約書の印紙

ソフトウェア保守契約書のうち、「継続的な請負契約」に該当するものについては、印紙税法上、第2号文書(請負に関する契約書)になりますが、「契約期間が3か月以内で、かつ自動更新のないもの」を除き、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にも該当することとなります。

 

この場合、どちらの文書に所属するかは、以下のとおり契約書に記載金額の記載があるかどうかで決定されることとなります(通則3のイ)。

 

●契約書に記載金額の記載がある場合(契約金額と契約期間の記載があり契約書上で契約金額が明確な場合)

 →第2号文書(印紙税額は、請負契約の契約金額により決定されます)

 

●契約書に記載金額の記載がない場合(契約金額と契約期間のうち、両方又はいずれかの記載がないため、契約金額が不明確な場合)

 →第7号文書(印紙税額は4,000円)

 

収入印紙を貼付していない場合でも、ソフトウェア保守契約書の有効性に影響がある訳ではありませんが、印紙税額の3倍の過怠金がかかりますし、企業としての信用力の低下となる場合も想定されますので、ご注意ください。

 

また、ソフトウェア保守契約書の業務内容が問い合わせ対応やバージョンアップ版の提供である場合は請負契約書に該当しませんので、第2号文書に第7号文書にも該当せず、不課税文書となり、収入印紙の貼付は不要となります。

 

 

 

 

  

ソフトウェア保守契約書の作成や見直しにお悩みの方へ

当事務所では、ソフトウェア保守契約書・ソフトウェア保守ライセンス規約の作成やチェックの依頼をこれまで数多く受けてまいりましたが、保守の対象、保守業務や保守サービスの内容などの記載が曖昧なものが多いと痛感しています。

 

これらを明確に記載することで、保守業務や保守サービスの性質が請負なのか、準委任なのか、はたまた単なる情報提供なのかが判断できることになり、委託を受ける保守会社の責任範囲が明確になり、これによって保守契約書の作成に着手できることになります。

 

契約書に、単に保守業務や保守サービスを羅列することが多く、本来あるはずの業務やサービスの連続性が表現されず、結果わかりにくい契約書になっていると感じています。

 

また、保守契約では納入品がないにもかかわらず、納入品や所有権・著作権の譲渡に関する条項の記載があるなど、よくある「開発・納入型」の業務委託契約書で締結してしまい、本来必要な条項が欠落し、不要な条項が規定されているという、実際とマッチしていない契約書も非常に多く見かけます。

そればかりか、請負にすることで過剰な責任を負ってしまい、自らが著しく不利に締結するということもあります。

 

当事務所は、お客様からのヒアリングを最も重視しており、しっかりと意思疎通を図ることで、より詳細かつ明確、そして、保守業務や保守サービスの連続性のある保守契約書を作成します。

これによって、長期間にわたり継続する保守契約を安心して結んでいただけるようお手伝いしたいと思っています。

 

 

 

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