業務委託契約書の仕様書(業務内容)の重要性を徹底解説!
最終更新日:2023年5月20日
業務委託契約書の仕様書について、詳細に解説しております。
目次
1.仕様書とは?2.委託者指定の仕様書
3.双方合意の仕様書
4.仕様書が最も重要?!
5.軽視される仕様書
6.仕様が不明確だと検査に合格しない?!
7.仕様が不明確だと契約不適合責任を追及できない?!
1.仕様書とは?
業務委託契約書における「仕様書」とは、委託(受託)する業務の内容、手順、納入する成果物の仕様、数量、機能、納期、納入場所、業務の実施条件など業務委託に関する仕様を書面等で定めるものです。
2.委託者指定の仕様書
業務委託契約書をリーガルチェックしていますと、委託者(発注者)が「仕様書」を指定する旨記載のあるものが多いです。
この場合、受託者の意思が反映されませんので、そもそも業務委託契約書で実現可能な内容ではないかもしれないので、非常にリスクのある記載なのですが、実はこれが結構見逃されていて、そのまま締結することが多いです。
受託者の立場としては、委託者の指定する「仕様書」の内容が実現可能な内容なのかを確認することが重要ですし、委託者と協議をして、ここまでは実現可能だが、これ以上は実現できないなどときっちりと委託者に伝えることが重要です。
そうしないと、受託者は債務不履行責任や損害賠償責任など重い責任を負うことになってしまいます。
3.双方合意の仕様書
「仕様書」を作成する場合、契約締結の前後を問わず、必ず両者がその内容について合意したほうがいいです。ここでは、契約締結の前後に分けて解説していきます。
契約締結前
業務委託契約書を締結するにあたり、契約締結前にしっかりと業務の内容や納入品の詳細などを「仕様書」に定め、合意するパターンです。最も理想的なパターンで、業務委託契約書に合わせて綴じこむことになりますので、実質的に業務委託契約書の一部となり、証拠力も高いものとなります。
あえて、業務委託契約書の条項として、業務の内容や納入品の詳細などを記載せず、支払や損害賠償などのいわゆる法律的な契約条項と業務の内容や納入品の詳細などを混在させないことになりますので、業務委託契約書の構成のほうもわかりやすくなります。
契約締結後
契約締結後に、業務の内容や納入品の詳細などを双方で合意して、「仕様書」として定めるパターンです。
この場合には、双方が合意したことを証するため、「仕様書」に責任者のサインや押印をするか、「仕様書」を業務委託契約に添付するための覚書を締結するなどしておくことが望ましいです。
気を付けなければならないのは、「仕様書」を作成しただけで、双方の押印や書面もなく、両者が変更可能な状態などで管理することです。
この場合には、せっかく合意しても、結局は口約束と同じで証拠力が低いことになりますので、せっかく「仕様書」を作成しても意味のないものになる可能性があります。
4.仕様書が最も重要?!
業務委託契約書には、損害賠償、契約の解除や守秘義務など重要な条文が多々ありますが、実は、「仕様書」(=業務や成果の仕様)が最重要と言っても過言ではありません。
それは、「仕様書」に定める業務や成果物の内容が明確にならないと、業務委託契約書のゴールが定まりませんし、業務委託契約書に必要な条文を取捨選択することができず、業務委託契約書のパターンが決まらないからです。
業務委託契約書を作成する場合には、まずは、「仕様書」(=業務や成果の仕様)をしっかり記載しましょう。
締結後に「仕様書」を定めるパターンもありますが、できるだけ締結前に定めることが重要となります。
締結後に定めるのであれば、締結前に成果物の概要は定めておき、詳細を「仕様書」に定めると言った流れがよさそうです。
当事務所で業務委託契約書の作成やリーガルチェックの依頼を受ける場合でも、クライアントの方から、丁寧にヒアリングを行うことからスタートして、業務や成果の内容をきっちり伺ってから、その業務委託契約書に必要となる条項やリスクを検討しています。
★業務委託契約書で最も重要な仕様書の記載は専門家にご依頼ください。
お見積りは無料です。
5.軽視される仕様書
業務委託契約書に、業務の内容や納入品の詳細などを明確に規定することが重要なのですが、実務の現場では、実にあっさり記載されてあったり、矛盾があったりと軽視されています。
業務委託契約書の契約条項は、各会社の法務担当者が熱心にチェックすることが多いですが、「仕様書」は、チェックされず、SEの方など現場の担当者止まりになっていることが多いようです。
法務担当者のチェックが少ない訳ですから、誤字脱字・重複記載等見るに堪えない「仕様書」を多く見てきました。
また、いつでも変更しやすいようにと、業務委託契約書と綴じられず、独立した「仕様書」で、双方の合意(署名や押印)のされていないものもよくあります。
これではお互いに合意したことにはなりませんので、同じ契約金額で業務や納品物を増やされたり、合意した期日を早められたりするかもしれません。
業務委託は委託者の立場が強いことが多いですので、特に受託者の場合、契約事務処理の負担軽減のために、このようなリスクを取ってはいけません。
しっかりと契約事務処理に向き合いましょう。
「仕様書」も業務委託契約書の一部ですから、業務委託契約書に合綴したり、合綴しない場合でも、双方が合意のうえ署名や押印をすることが重要なのです。
★仕様書をしっかりと記載することで有利になることも多々あります。
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6.仕様が不明確だと検査に合格しない?!
業務委託契約書が請負の性質を帯びる場合には、仕様が具体的かつ明確に定められていなければ、「仕様書」に定める業務(=仕事)が完成したことにならないことが想定されます。
このようなケースでは、受託者にとって、以下のデメリットがありますので、注意が必要です。
契約金額を支払ってもらえません
仕様が不明確であると、受託者が成果物を納入したとしても、委託者の検査に合格したことになりませんので、仕事が完成したことにならず、契約金額を支払ってもらえないということになります。
※請負契約は仕事の完成に対して報酬が支払われるからです。
損害賠償責任を負うことになります
仕様が不明確であると、仕事そのものが曖昧ですから、仕事が完成しないことになります。そうすると、受託者は、委託者に対して債務不履行による損害賠償責任を負うことになってしまいます。
契約を解除されます
仕様が不明確であると、仕事が完成しない訳ですから、民法の原則に従って契約を解除されることになります。
なお、契約解除した場合、両当事者は、原状回復義務がありますので、支払済みの金銭や引渡済みの目的物があれば、相手に返還することになります。
このように、「仕様書」の記載が不明確ですと、受託者にとって、リスクが高いといえます。
このようなことにならないよう、しっかりとした「仕様書」を作成することが重要です。
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7.仕様が不明確だと契約不適合責任を追及できない?!
2020年4月施行の改正民法では、従来の瑕疵担保責任が契約不適合責任とされ、委託者は「契約の内容に適合しない」場合に、受託者に契約不適合責任を追及することができることとなりましたので、「仕様書」(=契約の内容)には、委託する業務の目的、内容、手順、納入する成果物の仕様、数量、機能、合格基準、各工程のスケジュール、納期、納入場所、業務の実施条件、貸与品・提供品、報告書の提出方法・期限、免責など業務に関する仕様を「仕様書」に明確かつ詳細に定める必要があります。
そうでないと、委託者は、契約不適合責任を追及できないことも想定されます。
また、「仕様書」において、委託者と受託者の意識(何ができて何ができないなど)をきっちり合わせておかないと、必ずトラブルになってしまいます。
例えば、ホームページ制作の場合ですと、どのようなホームページにするのか、機能・デザインなどを明確にしておかなければ、実際に完成した場合に、受託者(ホームページ制作業者)は、「仕様書」の内容が不明確であるとはいえ、「仕様書」に記載されているとおりに作ったから問題ないと主張し、委託者(クライアント)は、自分の完成イメージとは異なるからこれだと業務が完了したことにならないと主張し、トラブルに発展してしまうのです。
実際に、仕様を明確にしていないことによって、裁判に発展したケースも多く見られます。
このように裁判にまで発展してしまうと、委託者も受託者も共に、何度も裁判所に通うことで、その準備や後処理に追われ、本来の業務に従事できないなど莫大な時間と金額を浪費してしまうことになり、多大な損害を被ることになってしまいます。
上記のことからも、「仕様書」には、できるだけ明確かつ詳細に業務内容などを規定しておくことは非常に重要であるといえます。