特定商取引法のクーリング・オフ法定書面を詳細解説!
最終更新日:2026年1月23日
事業者が商品の販売やサービスの提供にあたり、訪問販売や電話勧誘販売等の方法で勧誘を行い、消費者と契約を締結する場合(契約の申込みを受ける場合を含みます)には、特定商取引法に基づく各種の規制の適用を受けます。
これらの規制は消費者保護を目的とするものであり、クーリング・オフに関する法定書面に不備や記載漏れがある場合には、クーリング・オフ期間が進行せず、結果として、契約解除をいつまでも受け付ける状態が継続し、受領済みの報酬等を返金する義務が残り続けるおそれがあります。
また、その内容によっては、業務停止命令等の行政処分や罰則の対象となる可能性もあります。
もっとも、クーリング・オフ書面については、単に法定記載事項を形式的に準備すればいいというものではありません。取引類型の該当性、勧誘方法、契約締結までの経緯、書面交付のタイミングなどによって、判断がわかれてしまう場面が少なくないです。
本ページでは、クーリング・オフ法定書面に関する制度の一般的な枠組みを中心として、事業者が注意すべきポイント、判断を誤りやすい論点を中心に解説しています。
特定商取引法
特定商取引法は、正式には「特定商取引に関する法律」といいますが、事業者による違法・悪質・不当な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
また、特定商取引法では、消費者と事業者との間でトラブルが発生しすい取引について、事業者に対する各種の規制を課すとともに、消費者を保護する観点から各種のルールを定めています。
クーリング・オフとは
クーリング・オフとは、いわゆる「頭を冷やす期間」を設けるものであり、消費者が事業者による訪問販売や電話勧誘販売等により、契約の申込みや契約の締結を行った場合であっても、一定期間内であれば、理由を問わず、契約の申込みの撤回または契約の解除を行うことができる制度をいいます。
この制度に基づきクーリング・オフが認められる場合には、原則として、消費者は違約金等を支払うことなく契約を解除することができ、事業者においては、消費者から受領済みの代金等の返還を含む対応が求められます。
もっとも、返金の範囲や原状回復の方法については、取引の内容や提供済みの役務の性質等により、一律に判断できるわけではありませんので、留意が必要です。
クーリング・オフ対象取引類型
消費者と事業者との間でトラブルが発生しやすく、クーリング・オフの対象となる取引類型は以下のとおりです。
訪問販売
事業者が消費者の自宅や勤務先等に訪問して、商品や権利の販売、役務の提供を行う契約を締結する取引のことをいいます。
事業者の店舗や営業所での契約と異なり、消費者が不意打ち的に勧誘を受ける状況が想定されるため、クーリング・オフ制度の対象とされています。
もっとも、訪問販売に該当するかどうかは、勧誘の経緯や契約締結場所等を踏まえて判断する必要があります。
電話勧誘販売
事業者が消費者に電話をかけ、商品や役務の販売について勧誘を行い、契約を締結する取引をいいます。
電話という非対面の手段によって勧誘が行われるため、消費者が十分に検討する時間を確保しにくい点から、クーリング・オフ制度の対象とされています。
また、使用する媒体がZoom 等のオンライン会議ツールを使用した場合でも、電話勧誘販売に該当することがありますが、この点は、使用した媒体といった形式のみで判断されるものではなく、勧誘の経緯や契約締結に至る実態から判断されることになります。
継続的役務提供
事業者が消費者に対して、一定期間にわたり継続的に役務を提供し、かつ高額な対価を約する取引のことをいいます。
現在、特定商取引法上の対象となっている役務は、以下の7類型です。
①エステティック
②美容医療
③語学教室
④家庭教師
⑤学習塾
⑥パソコン教室
⑦結婚相手紹介サービス
役務の内容や提供期間、対価の総額によっては、継続的役務提供に該当するかどうかが問題となる場合があります。
訪問
事業者が消費者の自宅等を訪問して、消費者から物品を買い取る取引のことをいいます。
消費者が十分な準備や比較検討を行わないまま取引に応じてしまうおそれがあることから、クーリング・オフ制度の対象とされています。
近年では、ブランド品や貴金属等の買取に関するトラブルが問題となる事案が数多く発生しています。
連鎖販売取引
連鎖販売取引とは、いわゆるマルチ商法と呼ばれる取引であり、個人を販売組織に参加させることで報酬が得られると説明し、その参加条件として金銭の支払いや商品の購入を求める取引をいいます。
勧誘の方法や説明内容によっては、消費者が実態を十分に理解しないまま契約してしまうおそれがあるため、特定商取引法による規制の対象とされています。
業務提供誘引販売取引
「仕事を紹介するので収入が得られる」という説明により消費者を誘引し、その仕事に必要であるとして商品や役務の購入等を求める取引のことをいいます。
仕事の内容と購入した商品や役務との関係性が不明確なケースも多く、契約内容や勧誘の実態によっては、法令上問題となる場合があります。
クーリング・オフができない場合
以下の事例では、クーリング・オフができないこととなっております。
- 店舗販売(自分から店舗に出向く)(ただし、「特定継続的役務提供」、「連鎖販売取引」、「業務提供誘引販売取引」については、店舗や営業所で契約を締結した場合でもクーリングオフが認められます。)
- カタログやインターネットを見て申込む通信販売
- 営業のためにまたは営業として締結するもの
- 使用、消費した政令指定消耗品(生理用品、殺虫剤等)
- 自動車の購入やリースにかかる契約
- 葬儀サービスにかかる契約
- 商品代金やサービス料金が3,000円に満たない取引
クーリング・オフ期間
消費者は、正しく記載された法定書面(契約書または申込書)を受領した日から起算して以下の期間中は無条件で、契約の申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
なお、クーリング・オフの通知は、書面だけでなく電磁的記録(電子メール、FAX、送信フォーム等)でも可能です。

※事業者から消費者に交付される法定書面に不備がある場合、正しく記載された書面を受け取ったとはいえません。
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クーリング・オフ法定書面に記載すべき事項
特定商取引法では、事業者がクーリング・オフ対象取引を消費者と行う場合、一定の事項を記載した法定書面(商品の売買やサービス提供にかかる契約書または申込書)を交付するよう義務付けています。
また、消費者が法定書面を受け取っていない場合や法定書面の記載事項に不備がある場合、クーリング・オフ期間の1日目が開始されませんので、消費者は法定書面(契約書または申込書)を受領した日から起算して8日間や20日間を経過してもクーリング・オフできることになります。
主に契約の内容に関する事項
法定書面には、主に契約の内容に関する以下の事項について記載する必要があります。
- 商品若しくは権利又は役務の種類(特定商取引に関する法律第18条第1項第1号)
- 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(特定商取引に関する法律第18条第1項第2号)
- 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法(特定商取引に関する法律第18条第1項第3号)
- 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期(特定商取引に関する法律第18条第1項第4号)
- クーリング・オフに関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)(特定商取引に関する法律第18条第1項第5号)
主に商品・役務や事業者に関する事項
法定書面には、主に商品・役務や事業者に関する以下の事項について記載する必要があります。ここでは、電話勧誘販売を例にあげさせていただきました。
- 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第1号)
- 売買契約又は役務提供契約の申込み又は締結を担当した者の氏名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第2号)
- 売買契約又は役務提供契約の申込み又は締結の年月日(特定商取引に関する法律施行規則第45条第3号)
- 商品名及び商品の商標又は製造者名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第4号)
- 商品に型式があるときは、当該型式(特定商取引に関する法律施行規則第45条第5号)
- 商品の数量(特定商取引に関する法律施行規則第45条第6号)
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第7号)
- 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第8号)
- そのほか特約があるときには、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第9号)
主にクーリング・オフに関する事項
法定書面には、主にクーリング・オフに関する以下の事項について記載する必要があります。ここでは、電話勧誘販売の役務提供を例にあげさせていただきました。
- クーリング・オフ期間を経過するまでは、申込者等は、書面又は電磁的記録により契約の申込みの撤回又は契約の解除を行うことができること(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号イ)
- 上記1⃣に記載した事項にかかわらず、申込者等が、事業者がクーリング・オフにつき不実のことを告げる行為をしたことにより誤認をし、又は事業者が威迫したことにより困惑し、これらによってクーリング・オフを行わなかった場合には、当該事業者が交付した法定書面を当該申込者等が受領した日から起算して8日を経過するまでは、当該申込者等は、書面又は電磁的記録によりクーリング・オフを行うことができること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ロ)
- クーリング・オフは、申込者等が、当該クーリング・オフに係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ハ)
- クーリング・オフがあった場合においては、事業者は、申込者等に対し、クーリング・オフに伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ニ)
- クーリング・オフがあった場合には、既に当該契約に基づき役務が提供されたときにおいても、事業者は、申込者等に対し、当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができないこと。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ホ)
- クーリング・オフがあった場合において、当該契約に関連して金銭を受領しているときは、事業者は、申込者等に対し、速やかに、その全額を返還すること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ヘ)
- クーリング・オフを行った場合において、当該契約に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該申込者等は、当該事業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ト)
赤字・フォントサイズ
法定書面には、赤字赤枠での記載やフォントサイズについても決まりがありますので、基準に準拠する必要があります。
- 法定書面には法定書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載しなければなりません(特定商取引に関する法律施行規則第6条第2項)。
- 法定書面のうち、クーリング・オフの事項については、日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければなりません。(特定商取引に関する法律施行規則第6条第3項)
消費者に不利な内容の規定禁止
法定書面には、以下のような消費者に不利な内容の規定をすることができませんので、ご注意ください。
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に販売業者がその不適合について責任を負わない旨が定められていないこと。
- 購入者又は役務の提供を受ける者からの契約の解除ができない旨が定められていないこと。
- 販売業者又は役務提供事業者の責めに帰すべき事由により契約が解除された場合における販売業者又は役務提供事業者の義務に関し、民法に規定するものより購入者又は役務の提供を受ける者に不利な内容が定められていないこと。
- 法令に違反する特約が定められていないこと。

いつまでもクーリング・オフをされるリスク
せっかく事業者がクーリング・オフに関する法定書面を消費者に交付していたとしても、その記載事項に不備や記載漏れがある場合、勧誘にあたり事業者が不実のことを告げたり、威迫したことにより、消費者が誤認または困惑してクーリング・オフを行わなかったと認められる場合には、クーリング・オフ期間は進行しないこととなります。
このような場合には、法定の8日や20日のクーリング・オフ期間を経過していたとしても、消費者は契約の解除(クーリング・オフ)を行うことができ、事業者においては、受領済みの代金や役務の対価について返金対応を求められる可能性があります。
その結果、契約締結から相当期間が経過した後であっても、契約解除や返金対応を余儀なくされるおそれがあるため、事業者においては、法定書面の内容について、詳細な確認が必要となります。
まとめ
クーリング・オフに関する法定書面は、法律により記載内容(記載事項、クーリング・オフに関する赤字・赤枠表示等)が厳格に定められており、これに準拠していない書面は、そもそも有効な法定書面として扱われないおそれがあります。
その結果、法定のクーリング・オフ期間を経過していたとしても、契約解除や返金対応を求められるリスクが残るおそれがあります。
事業者においては、特定商取引法や関係法令に基づき、法定書面を準備し、説明・申込み手続きなどの運用面まで含めて、適切に整備しておくことが重要となります。
●実際は、このままでいいのか判断に迷う場面が少なくありません。
このような場合には、判断に迷われている点を中心にリーガルチェックすることができます。
よくあるご質問
クーリングオフ書面に関して、お客様から多く寄せられるご質問をまとめました。
- クーリング・オフ法定書面に記載漏れがあると、どうなりますか?
- クーリング・オフ法定書面に記載漏れがある場合、クーリング・オフ期間は進行しません。
そのため、契約締結から8日や20日を経過していても、消費者から契約をいつまでも解除される可能性が残ります。
また、サービス提供が完了している場合、代金を受領済みの場合であっても、解除を主張され、事業者は受領済みの代金を返金しなければならないことがあります。 - 赤字・赤枠・フォントサイズのルールを守らないとどうなりますか?
- クーリング・オフに関する事項は、赤字・赤枠での記載、8ポイント以上の文字サイズなど、形式上のルールが定められています。
これらを守っていない場合も、法定書面の不備と判断され、クーリング・オフ期間が進行しないおそれがあり、契約をいつまでも解除されたり、返金対応を余儀なくされる可能性があります。 - 専門家に相談しなくても、法定書面の準備はできますか?
- はい、法定書面自体は、事業者ご自身で作成することも可能です。
ただし、特定商取引法などで定められている法定書面は、記載事項や表示方法(赤字・赤枠表示など)が細かく定められており、形式・内容のいずれかに不備があると、有効な法定書面として扱われないおそれがあります。
この場合、クーリング・オフ期間が経過していても、契約解除や返金対応を求められるリスクが残ることがあります。
また、法的に有効な対応が求められるのは法定書面に限られず、概要書面の内容や交付方法、勧誘方法、社内での運用ルールまで含めて総合的に整備されている必要があります。
当事務所では、既にお持ちの書面を前提としたリーガルチェックサービスにも対応しております。
ご自身で作成した書面について、この内容で問題ないか不安がある場合には、お気軽にご相談ください。 - 自社の契約書や書面が、法定書面として有効か確認してもらえますか?
- はい、大丈夫です。
当事務所では、特定商取引法に基づき、現在ご使用中の契約書や概要書面が法定書面として有効かどうかを確認するリーガルチェックサービスを提供しています。
これまでの対応において、契約書面や概要書面の法定記載事項の記載漏れや不備を多数改善してきております。
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