特定商取引法のクーリング・オフ法定書面を詳細解説!
最終更新日:2024年11月14日
以下において、特定商取引法におけるクーリング・オフ法定書面について、事業者向けに詳細解説しております。
事業者が商品の販売やサービスの提供にあたり、訪問販売や電話勧誘販売等で勧誘して、消費者と契約を締結する場合(契約の申込みを受ける場合含む)、消費者保護のための規制があり、これに違反しますと、業務停止命令等の行政処分や罰則の対象となりますので、ご注意ください。
特定商取引法
特定商取引法は、正式には「特定商取引に関する法律」といいますが、事業者による違法・悪質・不当な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
また、特定商取引法では、消費者と事業者間でトラブルが発生しすい取引について、事業者に対する規制を図ったり、消費者を保護するためのルールを定めています。
クーリング・オフとは
クーリング・オフとは、頭を冷やすという意味です。
消費者が事業者からの電話勧誘販売などにより、いったん契約の申込みや契約の締結をした場合でも、頭を冷やして考え直し、一定期間であれば、理由を問わず、違約金を支払うことなく無条件で、契約の申込みの撤回または契約を解除ができるというものです。
クーリング・オフ対象取引類型
消費者と事業者間でトラブルが発生しやすく、クーリング・オフの対象となる取引類型は以下のとおりです。
訪問販売
事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約を締結する取引のこと。
電話勧誘販売
事業者が消費者に電話をかけて、販売の勧誘を行う取引のこと。
継続的役務提供
事業者が消費者に長期で継続的に提供される役務に対して、高額の対価を約する取引のこと。現在、エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療の7つが対象となっています。
訪問購入
事業者が消費者の自宅等を訪問して、消費者から物品を購入する取引のこと。
連鎖販売取引
個人を販売組織に参加させると報酬が得られるといって勧誘し、販売組織に参加する条件として金銭を負担させる取引のこと。
業務提供誘引販売取引
「仕事を紹介するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして商品の購入等を求める取引です。
クーリング・オフができない場合
以下の事例では、クーリング・オフができないこととなっております。
- 店舗販売(自分から店舗に出向く)(ただし、「特定継続的役務提供」、「連鎖販売取引」、「業務提供誘引販売取引」については、店舗や営業所で契約を締結した場合でもクーリングオフが認められます。)
- カタログやインターネットを見て申込む通信販売
- 営業のためにまたは営業として締結するもの
- 使用、消費した政令指定消耗品(生理用品、殺虫剤等)
- 自動車の購入やリースにかかる契約
- 葬儀サービスにかかる契約
- 商品代金やサービス料金が3,000円に満たない取引
クーリング・オフ期間
消費者は、正しく記載された法定書面(契約書または申込書)を受領した日から起算して以下の期間中は無条件で、契約の申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
なお、クーリング・オフの通知は、書面だけでなく電磁的記録(電子メール、FAX、送信フォーム等)でも可能です。
※事業者から消費者に交付される法定書面に不備がある場合、正しく記載された書面を受け取ったとはいえません。
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クーリング・オフ法定書面に記載すべき事項
特定商取引法では、事業者がクーリング・オフ対象取引を消費者と行う場合、一定の事項を記載した法定書面(商品の売買やサービス提供にかかる契約書または申込書)を交付するよう義務付けています。
また、消費者が法定書面を受け取っていない場合や法定書面の記載事項に不備がある場合、クーリング・オフ期間の1日目が開始されませんので、消費者は法定書面(契約書または申込書)を受領した日から起算して8日間や20日間を経過してもクーリング・オフできることになります。
主に契約の内容に関する事項
法定書面には、主に契約の内容に関する以下の事項について記載する必要があります。
- 商品若しくは権利又は役務の種類(特定商取引に関する法律第18条第1項第1号)
- 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(特定商取引に関する法律第18条第1項第2号)
- 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法(特定商取引に関する法律第18条第1項第3号)
- 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期(特定商取引に関する法律第18条第1項第4号)
- クーリング・オフに関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)(特定商取引に関する法律第18条第1項第5号)
主に商品・役務や事業者に関する事項
法定書面には、主に商品・役務や事業者に関する以下の事項について記載する必要があります。ここでは、電話勧誘販売を例にあげさせていただきました。
- 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第1号)
- 売買契約又は役務提供契約の申込み又は締結を担当した者の氏名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第2号)
- 売買契約又は役務提供契約の申込み又は締結の年月日(特定商取引に関する法律施行規則第45条第3号)
- 商品名及び商品の商標又は製造者名(特定商取引に関する法律施行規則第45条第4号)
- 商品に型式があるときは、当該型式(特定商取引に関する法律施行規則第45条第5号)
- 商品の数量(特定商取引に関する法律施行規則第45条第6号)
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第7号)
- 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第8号)
- そのほか特約があるときには、その内容(特定商取引に関する法律施行規則第45条第9号)
主にクーリング・オフに関する事項
法定書面には、主にクーリング・オフに関する以下の事項について記載する必要があります。ここでは、電話勧誘販売の役務提供を例にあげさせていただきました。
- クーリング・オフ期間を経過するまでは、申込者等は、書面又は電磁的記録により契約の申込みの撤回又は契約の解除を行うことができること(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号イ)
- 上記1⃣に記載した事項にかかわらず、申込者等が、事業者がクーリング・オフにつき不実のことを告げる行為をしたことにより誤認をし、又は事業者が威迫したことにより困惑し、これらによってクーリング・オフを行わなかった場合には、当該事業者が交付した法定書面を当該申込者等が受領した日から起算して8日を経過するまでは、当該申込者等は、書面又は電磁的記録によりクーリング・オフを行うことができること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ロ)
- クーリング・オフは、申込者等が、当該クーリング・オフに係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ハ)
- クーリング・オフがあった場合においては、事業者は、申込者等に対し、クーリング・オフに伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ニ)
- クーリング・オフがあった場合には、既に当該契約に基づき役務が提供されたときにおいても、事業者は、申込者等に対し、当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができないこと。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ホ)
- クーリング・オフがあった場合において、当該契約に関連して金銭を受領しているときは、事業者は、申込者等に対し、速やかに、その全額を返還すること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ヘ)
- クーリング・オフを行った場合において、当該契約に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該申込者等は、当該事業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができること。(特定商取引に関する法律施行規則第47条第1項第3号ト)
赤字・フォントサイズ
法定書面には、赤字赤枠での記載やフォントサイズについても決まりがありますので、基準に準拠する必要があります。
- 法定書面には法定書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載しなければなりません(特定商取引に関する法律施行規則第6条第2項)。
- 法定書面のうち、クーリング・オフの事項については、日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければなりません。(特定商取引に関する法律施行規則第6条第3項)
消費者に不利な内容の規定禁止
法定書面には、以下のような消費者に不利な内容の規定をすることができませんので、ご注意ください。
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に販売業者がその不適合について責任を負わない旨が定められていないこと。
- 購入者又は役務の提供を受ける者からの契約の解除ができない旨が定められていないこと。
- 販売業者又は役務提供事業者の責めに帰すべき事由により契約が解除された場合における販売業者又は役務提供事業者の義務に関し、民法に規定するものより購入者又は役務の提供を受ける者に不利な内容が定められていないこと。
- 法令に違反する特約が定められていないこと。
いつまでもクーリング・オフ
せっかく事業者が法定書面を消費者に交付しても、上記の法定書面の記載事項に不備がある場合、事業者が不実を告げたことや威迫したことにより消費者が誤認や困惑してクーリング・オフを行わなかった場合、クーリング・オフの期間は進行しないことになり、消費者がいつまでもクーリング・オフすることができることになりますので、ご注意ください。
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