フリーランス法と業務委託契約書を詳細解説!
最終更新日:2024年10月23日
フリーランスに業務を委託する場合、フリーランス法(特定受託事業者に係わる取引の適正化等に関する法律)の適用を受けることがあります。
ここでは、フリーランス法と業務委託契約書について、詳細に解説しております。
フリーランス法とは
フリーランス法とは、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といい、フリーランスと発注事業者との間の業務委託取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備を図り、フリーランスが安定的に業務に従事できるようにすることを目的としています。
対象事業者
フリーランス法で対象となる事業者は、以下のとおりです。
フリーランス
【特定受託事業者】
フリーランス法には、「特定受託事業者」と定義され、発注事業者から業務委託を受ける事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するものです。
①個人であって、従業員を使用しないもの
②法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの
発注事業者
フリーランス法では、次のとおり、「特定業務委託事業者」「業務委託事業者」を指します。
【特定業務委託事業者】
フリーランスに業務委託をする事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの
①個人であって、従業員を使用するもの
②法人であって、役員がいる、または従業員を使用するもの
【業務委託事業者】
フリーランスに業務委託をする事業者を指し、フリーランスも含まれます。
フリーランス法の対象となる取引
フリーランス法の対象となる「業務委託」とは、発注事業者がその事業のために、給付にかかる仕様、内容等を指定して、以下の取引について、フリーランスに委託することをいいます。
(1)物品の製造・加工委託
規格、品質、デザインなどを指定して、物品の製造や加工などを委託することをいいます。
・「物品」とは、動産を意味し、不動産は対象に含まれません。
・「製造」とは、原材料に一定の工作を加えて新たな物品を作り出すことを意味します。
・「加工」とは、原材料に一定の工作を加えて価値を付加することを意味します。
(2)情報成果物の作成委託
ソフトウェア、映像コンテンツ、デザインなどの作成を委託することをいいます。なお、「情報成果物」は、具体的には次のものがあります。・プログラム(ゲームソフト、開発ソフトウェアなど)
・映像や音声などから構成されるもの(テレビ番組、映画、アニメーションなど)
・文字、図形、記号などから構成されるもの(デザイン、漫画、設計図など)
(3)役務の提供委託
以下のような業務やサービスの提供を委託することをいいます。・保守、修理、点検、コンサルティング、清掃、マッサージなど
発注事業者の義務
発注事業者は、以下の義務を遵守しなければなりません。
(1)取引条件の明示義務(第3条)
発注事業者は、フリーランスに業務委託をした場合は、直ちに、書面または電磁的方法により、業務委託に関する取引条件について、以下の明示すべき事項を明示(3条通知)しなければなりません。もちろん、明示すべき事項を明示(3条通知)すれば、契約書の作成までを義務づけるものではありませんが、発注事業者がフリーランスに発注するタイミングで、業務委託契約書や業務委託契約に関する注文書注文請書のやり取りで契約締結できれば、フリーランスが合意できていることも明らかになりますので、このような方法で契約締結するのがよいでしょう。
※当事務所では、3条通知に対応する「業務委託契約書」「業務委託基本契約書+注文書注文請書」「注文書注文請書」の作成をすることができますので、ご興味ある方はお問い合わせフォームからお問い合わせください。
【明示すべき事項】
①業務委託事業者および特定受託事業者の名称
→発注事業者の名称とフリーランスの名称
②業務委託をした日
→発注事業者とフリーランスとの間で業務委託することに合意した日
③特定受託事業者の給付の内容
→発注事業者がフリーランスに委託する業務の内容
④給付を受領または役務の提供を受ける期日
→いつまでに成果物を納入するのか(納期)、また、いつ業務を実施するのか(業務実施日)
⑤給付を受領または役務の提供を受ける場所
→どこに成果物を納入するのか(納入場所)、また、どこで業務を実施するのか(業務実施場所)
⑥給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
→成果物の納入の検査について、いつ検査を完了するのか(検査完了日)
⑦報酬の額および支払期日
→具体的な報酬の額を定めることが難しい場合、報酬の額の算定方法を記載してもよいです。
支払期日は、具体的な支払日を特定する必要があります。
⑧現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること
※⑥および⑧は該当する取引である場合のみ明示が必要な事項
●この義務は以下の場合に義務づけられます。
・発注事業者(業務委託事業者)が業務を委託する場合
・発注事業者(特定業務委託事業者)が業務を委託する場合
・発注事業者(特定業務委託事業者)が1か月以上の期間行う業務を委託する場合
(2)期日における報酬支払義務(第4条)
発注事業者は、給付を受領した日(成果物を受領した日や業務を実施してもらった日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて、その日までに報酬を支払わなければなりません。また、支払期日を定める場合の起算日(=給付を受領した日)は、次のとおりです。
<物品の製造・加工委託>
・検査の有無にかかわらず、発注事業者が物品を受け取り、自己の占有下に置いた日
<情報成果物の作成委託>
・情報成果物を記録した電磁的記録媒体(USBメモリ、CD-R等)を受け取り、自己の占有下に置いた日
・電気通信回線を通じて発注事業者の用いる電子計算機内に記録されたとき
<役務の提供委託>
・個々の役務の提供を受けた日
・役務の提供に日数を要する場合には、一連の役務の提供が終了した日
※「末日までに」「●日以内に」という記載は、いつが支払期日なのか具体的な日を特定できないため、支払期日を定めたことにはなりません。「末日」「●日目」などとする必要があります。
●この義務は以下の場合に義務づけられます。
・発注事業者(特定業務委託事業者)が業務を委託する場合
・発注事業者(特定業務委託事業者)が1か月以上の期間行う業務を委託する場合
(3)募集情報の的確表示義務(第12条)
発注事業者は、広告等(※)によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
①業務の内容
・成果物または役務提供の内容
・業務に必要な能力または資格
・検収基準
・不良品の取扱いに関する定め
・成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲
・違約金に関する定めなど
②業務に従事する場所・期間・時間に関する事項・業務を遂行する場所、納期、期間、時間など
③報酬に関する事項
・報酬の額(算定方法を含む)
・支払期日
・支払方法
・交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む)
・成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価など
④契約の解除・不更新に関する事項・契約の解除事由
・中途解除の際の費用・違約金に関する定めなど
⑤フリーランスの募集を行う者に関する事項
・フリーランスの募集を行う者の名称・業績など
●この義務は以下の場合に義務づけられます。
・発注事業者(特定業務委託事業者)が業務を委託する場合
・発注事業者(特定業務委託事業者)が6か月以上の期間行う業務を委託する場合
(4)育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
発注事業者は、フリーランスからの申出に応じて、以下の配慮義務や努力義務を負います。•6か月以上の期間で行う業務委託について
フリーランスが妊娠、出産、育児または介護(育児介護等)と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
•6か月未満の期間で行う業務委託について
フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をするよう努めなければなりません。
●この義務は以下の場合に義務づけられます。
・発注事業者(特定業務委託事業者)が6か月以上の期間行う業務を委託する場合
(5)ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
発注事業者は、ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません。また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはなりません。●この義務は以下の場合に義務づけられます。
・発注事業者(特定業務委託事業者)が業務を委託する場合
・発注事業者(特定業務委託事業者)が6か月以上の期間行う業務を委託する場合
(6)中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)
•発注事業者は、①6か月以上の期間で行う業務委託について、②契約の解除または不更新をしようとする場合、③例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。•発注事業者は、予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示しなければなりません。
→途中で契約解除する場合、少なくとも30日前までに予告する義務があります。
●この義務は発注事業者(特定業務委託事業者)が6か月以上の期間行う業務を委託する場合に義務づけられます。
発注事業者の禁止行為(第5条)
発注事業者が1か月以上の期間で、フリーランスに業務委託をしている場合、以下の禁止行為が定められています。たとえフリーランスと合意できている場合でも、また、発注事業者に違法性の認識がない場合でも、禁止行為は違反となりますので、ご注意ください。
●この禁止行為は発注事業者(特定業務委託事業者)が1か月以上の期間行う業務を委託する場合に義務づけられます。
①受領拒否
フリーランスに責任がないのに、製造・加工や作成の委託をした物品や情報成果物の受取を拒否することです。
※正当な理由なく、発注を取消すことや納期を延期することも受領拒否になります。
②報酬の減額
フリーランスに責任がないのに、業務委託時に取引条件を明示した報酬の額を、後から減額して支払うことです。
※値引き、協賛金、歩引き等の減額の名目、方法、金額の多少を問わず、あらゆる減額行為が禁止されています。
③返品
フリーランスに責任がないのに、フリーランスに発注した物品や情報成果物を受領後に返品することです。不良品などがあった場合には、受領後6か月以内に限って、返品することが認められます。
④買いたたき
フリーランスに発注する物品等に対して、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を定めることです。買いたたきは、発注事業者がフリーランスに業務委託するにあたり、報酬を決定する際に規制されるものです。
※報酬の額は、発注事業者とフリーランスとの間で、協議して定めることが重要です。
※発注事業者が見積書を提出した後に、発注事業者が業務を追加したにもかかわらず、当初の契約金額のまま契約し、追加業務にかかる増額を行わない場合も買いたたきとみなされる可能性があります。
⑤購入・利用強制
正当な理由がないのに、発注事業者が指定する物品、役務などを強制して購入、利用させることです。
⑥不当な経済上の利益の提供要請
発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させ、フリーランスの利益を不当に害することです。名目を問わず、報酬の支払とは別に行われる金銭の提供、労務の提供などがフリーランスの直接の利益とならない場合に対象となります。⑦不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、フリーランスの給付の内容を変更させ、また、フリーランスからの給付を受領した後に給付のやり直しをさせたりして、フリーランスの利益を不当に害することです。
発注事業者は、自らの都合で、発注を取り消したり、やり直しをさせる場合には、フリーランスが作業に要した費用を負担する必要があります。
制裁等
発注事業者がフリーランス法を遵守しない場合、違反行為により、以下の制裁を受けることになります。
罰則
発注事業者が命令に違反したとき、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、違反行為をした代表者、代理人、使用人その他の従業者は、50万円以下の罰金に処せられます(第24条)。会社も同様です(第25条)。
勧告・公表
発注事業者は、以下の規定に違反すると、違反を是正し、又は防止するための必要な措置を行うよう勧告を受けことがあります(第18条)。
・募集情報の的確表示義務(第12条)
・ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
・中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)
・不利益な取り扱い禁止(第17条)
また、勧告を受けますと、勧告を受けた発注事業者の名称や勧告内容等が公正取引委員会により、公表されることになります。
検査
公正取引委員会、中小企業庁長官などは、必要と認める場合、発注事業者に対して、報告をさせ、立ち入り検査を行うことができます(第20条)。
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