業務委託契約書の委託と請負の違いを徹底解説!
最終更新日:2024年5月31日
業務委託契約書の委託と請負の違いについて、詳細に解説しております。
委託と請負は何が違うの?
「委託」と「請負」は、「業務委託」や「業務請負」などと、派遣と区別する意味(派遣ではないという意味)で、ほぼ同じように使用されることがあります。
「委託」と「請負」は何が違うのでしょうか?
「委託」は、仕事の完成責任を負う「請負」や「業務請負」と区別するため、一定の業務の遂行を目的とした委任の意味で、「委託」や「業務委託」と呼ばれることもあります。
よくわかりづらいというお声をいただく、「委託」と「請負」の違いについて、詳細に解説していきます。
委託とは?
業務委託契約書における「委託」とは、発注者がある業務の実施を受注者(外部の企業や個人)に依頼することをいいます。
「委託」は、特に法律に定められたものではなく、その法的性質は、主に、民法の「請負」か委任のいずれか、又はこれらの混在したものとなります。
そのため、「請負」と委任が理解できれば、「委託」も理解できるということになります。
まず、「請負」とは、当事者の一方(請負者)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約のこと(民法632条)をいいます。
「請負」の場合は、請負人が仕事を完成する義務を負いますので、仕事の完成責任を負う成果を引き渡したり、業務を完了させるなど、仕事を完成させなければ、報酬が発生しません。
また、一旦仕事が完成しても完成した目的物に契約不適合(種類または品質に関して契約の内容に適合しないこと)があれば、注文者から履行の追完請求(目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡し)、報酬の減額請求、損害賠償請求、契約の解除をされる契約不適合責任を負います。
たとえば、システム開発などのように、ただ業務を実施すればいいという訳ではなく、ユーザの要求する仕様に合致するシステムを納入しなければ、仕事を完成させることにはなりません。
次に、「委任」の場合は、受任者は、委任された行為の処理やその処理によってもたらされる成果の引渡しを、善良なる管理者の注意義務(職業や生活状況に応じて、抽象的な平均人として一般に要求される程度の注意義務)をもって行えば、報酬が発生しますし、仕事の完成義務を負いません。
例えば、患者と医師との診療契約の場合、医師は善管注意義務を負い、ベストは尽くしますが、必ず病気等の治癒に導かなければならない訳ではありません。患者としては、医師に診察してもらうという一定の事務を処理することを委任しており、病気の治癒という結果に対して報酬を払うものではありません。
委任で負う責任は、「請負」で負う責任よりも比較的軽いと言えそうです。
請負とは?
上記の「委託とは?」の「請負」において見てきましたとおりです。
「請負」は、仕事の完成責任を負ったり、業務完了後や納品後に契約不適合があった場合には、契約不適合責任という比較的重い責任を負います。
委託と請負の違い
「委託」は、仕事の完成責任を負う、法的責任の強い「請負」と区別するため、委任の意味で使用されていることが多いように感じますが、「委託」と「請負」の違いは、「委託」のほうが「請負」にプラスして、委任の性質を含むことがあるため、「請負」より広範囲なものを指します。
「請負」は、「請負」だけを指しますので、「委託」よりも狭い範囲となります。
もちろん、「業務委託」と「業務請負」も同様です。
また、以下に「委託」と「請負」の違いをまとめましたので、参考にしてください。
上図のとおり、「委託」が「請負」の性質を有する場合、「委託」は「請負」となりますし、「委託」と「請負」の間に違いはありません。
また、「委託」が委任の性質を有する場合、「委託」は委任となり、ここで、委任と「請負」の違いと同様に、「委託」と「請負」の間に違いが出てきます。
「委託」という考え方は広範囲な考え方にはなりますが、民法にはありませんので、民法の規定に沿い、「委任」と「請負」の違いを意識すると、わかりやすいのではないかと考えます。