SES契約書(準委任契約)を徹底解説!
最終更新日:2025年6月23日
法的にグレーな部分も存在するSES契約書について、徹底解説をしております。
SESとは?
SESとは、「システムエンジニアリングサービス(Systems Engineering Services)」のことで、受託者のエンジニアを委託者の作業場所に常駐させて、委託者の行うソフトウェアやシステムの開発・保守・運用等を専門的な立場から技術サポートするものです。
SESは非常に多く利用されていますが、準委任契約といいながら、実態が派遣契約となっていることがあり、法的にグレーな部分も存在しますので、その運用には十分注意する必要があります。
SESの特徴
SESは、以下の特徴があります。
- 委託者の事業所に、受託者のエンジニアを常駐させる場合が多いです。最近はテレワーク導入の場合もあります。
- SES業務の内容がシステム開発・システム保守・システム運用などに関する技術支援業務であることが多いです。
- 労働者派遣契約でなく、準委任型の業務委託契約として締結されます。
- 準委任契約となり、仕事の完成でなく、SES業務の実施により報酬が発生する性質があります。
- 派遣契約ではありませんので、委託者は受託者のエンジニアに直接指揮命令ができません(実際は指揮命令している場合もあり)。
- 受託者が個人事業主であれば、労働契約の可能性もあり、残業代や労災の支払等もあり注意が必要となります。
SES契約と準委任契約
SES契約は、ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用等に関する技術サポート業務を委託者から受託者に委託するものです。仕事の完成責任を負う成果物の納入ではなく、業務の処理に対して報酬が支払われる準委任契約となっているものが一般的です。
SES契約と派遣契約
SES契約は、受託者がエンジニアを委託者に常駐させて行うものですから、派遣契約と類似した契約スキームとなります。
契約の流れはそれぞれ以下のとおりとなります。
①SES契約:委託者→受託者→エンジニア
②派遣契約:派遣先→派遣元→エンジニア
派遣契約の場合は、常駐先である「派遣先」からエンジニアに直接指揮命令できますが、SES契約の場合、常駐先である「委託者」からエンジニアには直接指揮命令できず、受託者が定めた責任者を通じて行う必要があります。
この指揮命令形態がうまくいっていない場合、偽装請負となり違法性の可能性が高まります。実際、そのようなSES契約書を多く見かけますので、ご注意ください。
SES契約と派遣契約の違い
SES契約と派遣契約の違いをいくつかの観点からまとめてみました。
SES契約がNGとなる可能性が高いケース
SES契約がNGとなる可能性が高いのは以下のケースです。
①委託者がエンジニアに直接指揮命令している
SES契約書ですから、 形式的には準委任契約かもしれませんが、委託者が受託者のエンジニアに直接指揮命令すると、実質的に「偽装派遣」になると判断され違法となる可能性があります。委託者は、受託者の責任者を通じて、エンジニアに指揮命令する必要があります。
➁委託者がエンジニアの勤怠管理をしている(勤務時間の把握)
業務の委託を受ける個人事業主としての独立性がなくなり、「雇用」とみなされるリスクがありますし、「偽装請負」の可能性もあります。
SES基本契約書
SES契約書を締結する際には、個別にSES契約書を締結するのではなく、SES基本契約書を締結しておいて、その後案件ごとに、注文書と注文請書により個別契約書を締結することが多いです。
注文書と注文請書については、業務内容をしっかりと規定しておくことが必要ですし、下請法やフリーランス法に該当する取引になるようでしたら、下請法3条書面、フリーランス法3条通知の要件に合致するように作成する必要があります。
請負型のSES契約書
SES契約は、一般的に「準委任契約」として構成されることが多いです。
一方で、委託側としては、故意に「請負契約」として締結し、受託者にソフトウェア開発やドキュメントの作成など仕事の完成責任を負う業務を委託することもあります。この場合、「請負契約」ということでいいのですが、SES契約を「準委任契約」としながらも、契約内容が「請負契約」となっているものが多く見受けられます。
タイトルにSES契約書と記載していて、SES契約書は一般的に「準委任契約」だから「準委任契約」だと主張される方も多いのです。
SES契約書については、業務や契約の内容など中身で判断しますので、「準委任契約」にしたいのであれば、「準委任契約」に沿った業務内容や契約内容であることが必要ですので、ご注意いただきたいです。
SES契約書は、「請負契約」でなく、「準委任契約」とすることが一般的ですので、実際に「準委任契約」とするのであれば、以下の条項については、SES契約書には記載しないほうがよさそうです。
記載してしまいますと、「請負契約」と判断されて、仕事の完成責任を負うことにもつながりますし、収入印紙がかかることもあります。
・仕事の完成をチェックする受入検査
・契約不適合
・仕事の完成に対する報酬の支払
SES契約書の印紙
SES契約書は、「準委任契約」となることが一般的であり、この場合、「不課税文書」となりますので、収入印紙は不要となります。
但し、SES契約書に、「請負契約」の性質を有する条項を規定することで、印紙税法上の「2号文書」や「7号文書」と判断され、収入印紙の貼付が必要となる可能性がありますので、ご注意ください。
SES契約書について、リーガルチェックをしてみると、収入印紙の貼付が必要となる「課税文書」となっていた事例がいくつもありますので、ご不安な方は、お気軽にご相談ください。
SES契約書の作成やリーガルチェックを希望する方へ
当事務所では、「SES契約書」の作成やリーガルチェックを希望するお客様に対しては、業務の内容、業務の性質、業務の指揮命令系統や契約金額の精算など伺っております。
SES契約書は、偽装請負のおそれのある違法性のあるものも多く、その運用には注意する必要があります。
業務委託なのに、委託者(常駐させる側)が受託者のスタッフに直接指揮命令していることはよくあることで、違法の可能性があります。
SES契約書で、安全に進めるためには、しっかりとした知識と経験を持った専門家に依頼していただきたいです。
当事務所では、お客様の運用が問題ないかを考えて、SES契約書を作成したり、リーガルチェックさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
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