売買基本契約書の契約不適合責任の期間を詳細解説! - 契約書の作成リーガルチェックは企業法務経験豊富な行政書士へ

契約書のコンテンツ

売買基本契約書の契約不適合責任の通知期間と権利行使期間(消滅時効)を詳細解説!

最終更新日:2024年6月23日

 

以下において、売買基本契約書の契約不適合責任の通知期間や権利行使期間(消滅時効)について詳細解説しております。

 

 

買主による契約不適合責任の通知期間

売買契約において、買主は、引渡された売買の目的物に契約不適合があるとき、契約不適合を知ったときから1年以内に、その旨を売主に通知しなければなりません。

 

もし、買主が契約不適合を知ったときから1年以内に、目的物の契約不適合を売主に通知をしないとすれば、売主に対して、契約不適合責任を追及できなくなってしまいます。

 

そのため、買主は、まず、契約不適合を知ったときから1年以内に、売主に通知することで、契約不適合責任を追及する権利を確保しておく必要がある訳です。

 

なお、買主は、売主が引渡しの時に目的物の契約不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、契約不適合を知ったときから1年以内に通知をしなくても、契約不適合責任を行使することができます。

 

keiyakufutekigousekinin tsuuchikikan kenrikoushikikan

 

また、買主は、目的物の数量に契約不適合がある場合、移転した権利に契約不適合がある場合、売主への通知期間の制限は適用されません(民法第566条本文)。そのため、契約不適合を知ったときから1年以内に通知をしなくても、契約不適合責任を追及することができます(民法第566条但書)。

 

 

 

商法第526条第2項の適用

商人間の売買については、商法第526条に契約不適合責任の定めがあります。

 

商法第526条第2項

前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。

 

買主は、目的物の検査でただちに発見できない契約不適合について、6か月以内であれば契約不適合の責任を追及できることとなっております。この場合も買主は売主に対してただちに通知をしなければなりません。

 

商人間の売買ですから、いわゆるプロ同士の売買となります。そのため、確認に要する時間が通常より少なくてもいいと取引の迅速性を重視した期間設定となっております。

 

また。商法第526条第2項において、数量不足は、検査のときは対象となりますが、ただちに発見できない契約不適合のときは、対象となっておりません。数量不足は、検査のときにただちに発見すべきだということだと考えられます。

 

 

 

契約不適合責任の権利行使期間(消滅時効)

契約不適合責任は、買主に売主が目的物に契約不適合がある旨を通知した場合でも、それだけでは足りず、契約不適合責任の権利行使をしないといけません。

 

買主が具体的に、履行追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を行う必要があります。

 

以下の民法第166条第1項にもあるとおり、買主が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、またはその権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、契約不適合責任の権利が時効で消滅します。

 

民法第166条条文

(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
   一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
   二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

 

言い換えると、買主が権利行使できることを知った時から5年以内で、かつ買主が権利行使できる時から10年以内に権利行使しないと、契約不適合責任を行使できないということになります。

 

 

 

契約書による通知期間の修正

契約不適合責任については、以前にあった「瑕疵担保責任」よりも買主に有利な規定へと改正されていますが、契約不適合責任は「任意規定」ですから、契約書に規定すれば、法律の定めよりも優先されることとなっております。

 

そのため、特に売主にとって、契約書を締結して、契約不適合責任について民法と異なる定めをすることは大きなメリットとなります。

 

契約書において、契約不適合責任の通知期間や起算点を変更するなど売主の責任を民法の規定より軽減することができます。

 

実務的には、以下のような規定で締結されることもあります。

 

1.起算日を早める例

買主は、納入された商品に種類または品質に関して契約不適合を発見したときは、商品の引渡し後1年以内に通知した場合において、履行の追完を請求することができる。

2.期間を短くする例

買主は、納入された商品に種類または品質に関して契約不適合を発見したときは、契約不適合を知った時から6か月以内に通知した場合において、履行の追完を請求することができる。

3.起算日を早め、期間を短くする例

買主は、納入された商品に種類または品質に関して契約不適合を発見したときは、商品の引渡し後6か月以内に通知した場合において、履行の追完を請求することができる。

売主としては、契約不適合責任を負う期間をできるだけ早めに起算し、できるだけ短くしたいですので、上記1~3の中であれば、3の例を採用したいところです。

 

但し、消費者契約法に該当する場合など、売主に有利となる規定は無効とされる場合がありますので、注意が必要となります。

 

 

 

 

Copyright©2011 - Hilltop Administrative Scrivener OfficeAll Rights Reserved. login