契約書の印紙の基本(課税不課税文書・電子契約・消印・過怠税など)を詳細解説!
最終更新日:2025年11月24日
契約書を作成するとき、または契約書を締結するとき、「この契約書に印紙を貼る必要あるの?」と迷われる方が非常に多いです。
印紙税の貼付の要否は、この契約書が「課税文書」に該当するのかによって判断されます。
本ページでは、契約書に印紙が必要かどうかを判断するための基本的なルールを、企業法務経験豊富な行政書士がわかりやすく詳細解説しております。
印紙税とは?
印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の領収書などに課税される税金で、印紙税法に定められている20種類の課税文書(書面)が課税の対象となります。
課税文書にかかる納付すべき印紙税の額は、「印紙税額一覧表」に記載のとおり、その内容にかかわらず定額であるものや、契約書の内容や契約金額、受取金額などによって異なるものもあります。
印紙を貼付する必要がある場合と不要な場合
印紙の貼付が必要となるのは、印紙税法別表第一(課税物件表の課税物件欄)のいずれかに該当する課税文書です。
業務委託契約書では、第2号、第7号、第1号の1文書が主な課税文書となりますので、これらに該当すると、印紙の貼付が必要となります。
一方、課税文書に該当するものの、除外規定で課税対象とならない文書(非課税文書)や印紙税法別表第一(課税物件表の課税物件欄)の課税文書に該当しない文書(不課税文書)については、印紙税の課税対象外ですから、印紙の貼付が不要となります。
●契約書作成をご検討の方へ
契約書を新規で作成したい場合は、当事務所の契約書作成サービスページをご覧ください。
印紙税の節税を意識した業務委託契約書・代理店契約書・取引基本契約書など幅広い契約書に対応しています。
「非課税文書」と「不課税文書」の違い
「非課税文書」と「不課税文書」は、どちらも印紙の貼付が不要ですが、その違いについては、以下のとおりです。
「非課税文書」とは、印紙税法別表第一(課税物件表の課税物件欄)のいずれかの号(課税文書)に該当するものの、除外規定で課税対象とならない文書をいいます(印紙税法第5条)。
例えば、印紙税法別表第一の「第2号文書」に該当する契約書であっても、契約金額が1万円未満の場合、「非課税文書」に該当し(例外あり)、印紙の貼付は必要ありません。
「不課税文書」とは、印紙税法別表第一(課税物件表の課税物件欄)のいずれにも該当しない文書のことをいい、印紙税の課税対象外です。
よく問題になることの多い業務委託契約書における「非課税文書」と「不課税文書」に関する例で、以下のとおり解説しております。
非課税文書の例
- 契約金額が8,000円の請負契約書(印紙税法第5条第1号)
- 国等(国、地方公共団体、別表第2に掲げる者)が作成した請負契約書
(=国等以外の者が保存する請負契約書)(印紙税法第5条第2号)
不課税文書の例
- ソフトウェア保守契約書(Q&A回答、修正版の提供など)
- ソフトウェア使用許諾契約書
- ASPサービス契約書
- ハウジングサービス契約書、ホスティングサービス契約書
- 物品売買契約書(継続的取引でなく、一時的・単発のもの)
- 準委任契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
- 労働者派遣契約書(基本契約書・個別契約書)
- レンタル契約書、リース契約書
- 委任状
- 情報提供契約書
※上記につきましては、一般的な契約書について、タイトルのみで判別したものであり、具体的には文書の記載内容により異なる場合があります。
●ご自身で用意した契約書のチェックをご検討の方へ
インターネットで入手したフォーマットやAIが生成した契約書は、一見整っていても実際の取引内容に合わないケース・ご自身に不利なケースが少なくありません。
印紙税の節税を意識しつつ、取引内容や業界慣行に照らして不足条項やリスクを指摘し、法的にも安全な修正提案を行います。当事務所の契約書リーガルチェックサービスページをご覧ください。
印紙税額一覧
課税文書のうち、契約書と関連しそうなものは、第1号文書、第2号文書、第5条文書、第7号文書、第12条乃至第15条です。
ここでは、契約書として該当することの多い第2号文書の印紙税額一覧表を以下に示しました。

●ご自身で用意した契約書のチェックをご検討の方へ
インターネットで入手したフォーマットやAIが生成した契約書は、一見整っていても実際の取引内容に合わないケース・ご自身に不利なケースが少なくありません。
印紙税の節税を意識しつつ、取引内容や業界慣行に照らして不足条項やリスクを指摘し、法的にも安全な修正提案を行います。当事務所の契約書リーガルチェックサービスページをご覧ください。
電子契約の場合
クラウドサイン、GMOサインなどの電子契約サービスを利用して締結した「電子データの契約書=電子契約」の場合には、収入印紙を貼付する必要はありません。
印紙税法が課税対象としているのは、あくまで以下の2つの性質を満たすものだからです。
①紙に記載された「文書」であること
②対象となる文書が印紙税法上の「課税文書」に該当すること
そのため、電子契約は①に該当しないため、課税文書に該当しません。
その根拠としては、以下の「印紙税法基本通達 第44条」の規定があげられます。
【根拠】印紙税法基本通達第44条第1項
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
課税文書の「作成」とは、用紙等に課税事項を記載し、課税文書の目的に従って行使すること、つまり、契約の場合、紙の契約書に記載して、その紙の契約書を契約締結するために相手方に提示・交付して使用すること)でありますので、電子契約による締結は、そもそも課税文書の「作成」に該当せず、印紙の貼付は必要ないということになります。
●契約書作成をご検討の方へ
契約書を新規で作成したい場合は、当事務所の契約書作成サービスページをご覧ください。
印紙税の節税を意識した業務委託契約書・代理店契約書・取引基本契約書など幅広い契約書に対応しています。
消印
契約書に貼付した印紙には、契約書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければなりません(印紙税法第8条)。
これは、一度貼付した印紙の再利用を防止するためです。消印は、契約当事者のうち、1人がすればよく、全員でする必要はありません。
また、消印の方法については、印鑑であることが一般的ですが、署名でもOKとされていて、作成者、代理人、使用人、従業者のものとされています(印紙税法施行令第5条)。
上記のように、課税文書に印紙を貼付していても、消印をするのを忘れていた場合、ペナルティとして、本来貼付すべきであった印紙の金額と同額の過怠税を納付することになります(印紙税法第20条)。
仮に7号文書だとすると、消印をしていないばかりに、別に4,000円負担することになってしまいます。せっかく印紙を貼付している訳ですから、過怠税を支払うのはもったいないです。注意しましょう。
なお、印紙に消印をしない場合でも、これは印紙税法上の義務ですから、契約の効力に特段影響はありません。

印紙を貼付しなかった場合
契約は契約当事者の合意により成立しますので、印紙を貼付しなかったり、貼付し忘れた場合でも、契約の効力に特段影響はありませんが(契約自体は有効)、ペナルティとして過怠税を徴収され、結果、通常の印紙税額より多く納付する必要があります。
- 本来印紙を貼付すべき課税文書に印紙の貼付しなかった場合
→正規の印紙税額の3倍(納付しなかった印紙税額とその2倍に相当する金額との合計額)に相当する過怠税を徴収されます。 - 印紙を貼付し忘れた場合で、税務調査を受ける前に自主的に申告したとき
→正規の印紙税額の1.1倍に相当する過怠税を徴収されます。
国や地方公共団体と締結する場合
まず、国や地方公共団体と契約を締結する場合、国や地方公共団体が契約書を作成する場合、その契約書に印紙税は課税されません(印紙税法第5条第2号)。
例えば、民間企業が国や地方公共団体と契約書を締結する場合、民間企業が契約締結後に保存する契約書は、国や地方自治体が作成したものとみなされます(印紙税法第4条第5項)ので、印紙の貼付は不要ということになります。
一方で、国や地方自治体が契約締結後に保存する契約書は、民間企業が作成したものとみなされますので、民間企業が所定の印紙を貼付する必要があります。
このように、民間企業と国や地方公共団体が契約書を締結する場合、必ず、印紙の貼付された契約書を国や地方公共団体が保存するようにし、印紙の貼付されていない契約書を民間企業が保存するようにしないといけません。
なお、民間企業が国や地方公共団体と請負の性質を有する業務委託基本契約書を締結する場合、国や地方公共団体は、令26条第1号に定める「営業者」に該当しませんので、「第7号文書」とはなりません。ご注意ください。

●月額制の契約書定額チェック(顧問型)をご検討の方へ
ご契約件数が多い企業様・事業者様に適したサービスで、毎月の契約書レビュー、修正提案、印紙税確認などを定額でサポート。法務部の外部顧問のように、安心してお取引いただける体制づくりをサポートします。
当事務所の契約書定額チェックサービスページをご覧ください。
サービス案内
- 契約書の作成を希望する方契約書作成サービス
- 契約書のリーガルチェックを希望する方契約書リーガルチェックサービス
- 契約書の定額チェックを希望する方契約書定額チェックサービス



