業務委託契約書の期限の利益喪失 - 契約書の作成リーガルチェックは企業法務経験豊富な行政書士へ

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業務委託契約書の期限の利益喪失を徹底解説!

最終更新日:2025年11月22日

業務委託契約書の期限の利益喪失について、徹底解説をしております。期限の利益喪失は、金銭消費貸借契約書や取引基本契約書などの契約書でも見られますが、ここでは、業務委託契約書を前提とした解説とさせていただきます。

  

 

期限の利益とは

「期限の利益」とは、支払期限までは委託者が委託料を支払わなくてもよいという利益のことをいいます。

 
そのため、期限の利益がある間は、たとえ支払っていなくても債務不履行にはなりません。

 

 

期限の利益を受ける当事者

一般的な業務委託契約書(請負・準委任)では、期限の利益を受けるのは委託者です。

 

ただし、販売代理店契約書のように、受託者が顧客から代金を回収し、後日、委託者に振り込むスキームの場合には、受託者が期限の利益を受けることもあります。また、契約によっては双方が期限の利益を受けるケースもあります。

 

 

 

期限の利益を喪失させる理由

受託者の立場では、通常は支払期限まで支払いを待つことになりますが、委託者の財産状態が急激に悪化した場合、支払期限まで待つと債権回収が困難となるおそれがあります。

 

もし委託者が破産などに至った場合、委託者に期限の利益があるため、支払い請求ができず、そのまま回収不能になるリスクが生じます。

 

そのため、業務委託契約書に「期限の利益喪失」の条項を規定して、委託者の財産状態が悪化した時点で委託料の支払いを請求できるようにしておく必要があります。

  

 

 

民法における期限の利益喪失

期限の利益喪失については、以下のとおり、民法第137条に規定があります。

 

(期限の利益の喪失)
第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
 一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
 二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
 三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

 

ここでの「債務者」は、一般的な業務委託契約書の場合では、委託者と読み替えることができます。

 

ただし、この民法第137条に規定された事由だけでは、実務上は債権回収が間に合わない場面が多いため、契約書で期限の利益喪失事由を規定しておくことが重要になります。

 

 

 

期限の利益喪失条項を設けるメリット

受託者にとっては、委託者の財産状態が悪化した場合に、委託者の期限の利益を失わせ、ただちに支払請求できるようにするためには、契約書で以下のような事由を定めておく必要があります。

 

(1)手形又は小切手を不渡りとしたとき
(2)差押え、仮差押え、仮処分、競売、租税滞納処分その他公権力の処分を受けたとき
(3)破産手続開始、会社更生手続開始若しくは民事再生手続開始の申立てがあったとき、又は清算に入ったとき
(4)財産状態が悪化したとき
ほか、契約で定めるもの

 

これらは、業務委託契約書の「契約の解除」の条項における「無催告解除事由」とほぼ同じ内容になるのが一般的です。 

 

 

業務委託契約書、取引基本契約書、販売代理店契約書、建設工事請負契約書など数多くの実績があります。

 

 

 

まとめ

業務委託契約書では、委託者に支払期限までの猶予が認められるのが通常ですが、委託者の財産状態が悪化すると、そのままでは受託者が債権を回収できないおそれがあります。


民法第137条の期限の利益喪失だけでは、実務上は対応が遅れて債権回収が困難となってしまうため、業務委託契約書に、独自の期限の利益喪失条項を規定しておき、財産状況が悪化した時点で支払請求できるようにしておくことが重要です。

 

特に、破産や不渡り、差押え、再生手続の申立てといった典型的な事由は、支払不能の前兆として扱われますので、「契約の解除」条項と同様の事由を規定しておくと実務で使いやすくなります。

 

期限の利益喪失条項の定め方、業務委託契約書全体のバランスに不安がある場合は、業務委託契約書に精通した行政書士にご相談ください。

 

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