旧下請法から取適法への改正ポイントを徹底解説!
最終更新日:2025年12月1日
2026年1月1日より、「下請代金支払遅延等防止法(略称:下請法)」は改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法(とりてきほう))」に再編されることになります。
本ページでは、今回の改正点のポイントについて、詳細に解説しております。
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法律のタイトル・用語の変更
法律のタイトル・使用される用語が変更になっております。
①法律のタイトルの変更
下請代金支払遅延等防止法→製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
②用語の変更
・下請代金→製造委託等代金
・親事業者→委託事業者
・下請事業者→中小受託事業者
下請事業者の「下請」や親事業者の「親」という文言には、委託側と受託側の上下関係をイメージさせるものであり、あくまでも、お互いが対等な関係であることをイメージさせるよう変更されております。
適用対象の拡大
下請法より広い範囲を対象とするため、取適法の対象となる事業者や取引の範囲が拡大されました。
①事業者の基準の見直し
これまで事業者を区分するための資本金基準(資本金3億円・5千万円・1千万円)がありましたが、これに加え、従業員数による基準が新たに追加されました。
・製造委託、修理委託、情報成果物作成委託(プログラム)、役務提供委託(運送、倉庫における保管、情報処理)、特定運送委託を行う場合
委託事業者の常時使用する従業員数が300人を超過する場合で、中小受託事業者の常時使用する従業員数が300人以下(個人含む)のとき
・情報成果物作成委託(プログラム除く)、役務提供委託(運送、倉庫における保管、情報処理を除く)の場合
委託事業者の常時使用する従業員数が100人を超過する場合で、中小受託事業者の常時使用する従業員数が100人以下(個人含む)のとき
②対象取引の追加
従来、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の4つが対象取引でしたが、これに加え、新たに「特定運送委託」が追加されました。「特定運送委託」は、事業者が販売する物品、製造・修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引です。今回の改正で、取適法の対象取引として追加されたものです。
③木型等の対象への追加
「製造委託」においては、物品等の製造に用いられる金型の製造が適用対象でしたが、改正により、専ら物品等の製造に用いる木型、工作物保持具(治具)等の製造も適用対象として追加されました。
委託事業者の義務の変更
委託事業者の義務が以下のとおり変更になっています。
①発注内容等を明示する義務
・中小受託事業者からの承諾がなくとも電磁的方法による明示が可能となりました。
・発注内容等を明示する方法は書面か電磁的方法のみが認められるが、どちらにするかは委託事業者が選択できます。
・委託事業者は、発注内容等を電磁的方法により明示した場合、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、書面交付する必要があります。ただし、中小受託事業者からの保護に支障を生ずることがない場合には、必ずしも書面交付する必要はありません。
→業務委託契約書として契約する場合は、あまり関係ないのかもしれません。
②不当減額時の遅延利息支払い義務
委託事業者は、中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決定した製造委託等代金の額を減じた場合、起算日から実際に減じた額の支払をする日までの期間について、減じた額に対して遅延利息を支払う義務が新たに追加されました。
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禁止行為の追加
従来、委託業者には、11の禁止行為が定められていましたが、改正により、以下の2つの禁止行為が追加となりました。
①協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号)
委託事業者が価格協議を求められたのに、中小受託事業者との協議に応じなかったり、必要な説明を行わないなど、一方的に代金を決定することが新たに禁止行為として追加されました。特定運送委託は、事業者が販売する物品、製造・修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引です。今回の改正で、取適法の対象取引として追加されたものです。
②手形払等の禁止(第5条第1項第2号)
製造委託等代金の支払禁止に、手形を交付すること、電子記録債権や一括決済方式について、支払期日までに製造委託等代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用することも支払遅延に該当し禁止されることが追加されました。③事業所管省庁への通報可能による報復禁止義務の強化(第5条第1項第7号)
中小受託事業者が、委託事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に通報したことを理由に、取引停止・数量の削減など不利益な取り扱いを禁止していましたが、委託事業者の違反行為を公正取引委員会、中小企業庁に知らせたことを理由に、委託事業者がその中小受託事業者に取引数量の削減・取引停止など不利益な取扱いをする報復措置を禁止していましたが、改正により、通報先として事業所管省庁も追加されました。④振込手数料負担の運用変更(第5条第1項第3号関連)
委託事業者が中小受託事業者との合意の有無にかかわらず、製造委託等代金を中小受託事業者の金融機関口座に振り込む場合の振込手数料を中小受託事業者に負担させ、製造委託等代金から差し引いて支払うことは減額に当たり、違反となります。
面的執行の強化
従来、公正取引委員会や中小企業庁が違反行為に対して指導・助言を行ってきましたが、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与され、複数の省庁が連携して違反行為に対応する「面的執行」が強化されました。
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取適法Q&A
下請法から取適法への改正に関するQ&Aについて、まとめてみました。
- 取適法とは何でしょうか?
- 取適法とは、正式には、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、略称として「中小受託取引適正化法」といいます。
従来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」が再編されたもので、上流の事業者(発注者)が下流の事業者(受注者)に不当に不利な取引条件を押し付けることを防止し、取引の公正化を図る法律です。 - 今回の改正のポイントは何ですか?
- 今回の改正の大きなポイントは以下のとおりです。
①適用対象の拡大
従業員数(300人・100人)による基準が追加され、対象取引として特定運送委託が追加されました。
②発注方法の変更
発注は「書面交付」から「書面または電磁的方法による明示」へと変更されました。
③協議に応じない一方的な代金決定の禁止の追加
価格協議を拒否して一方的に決定する行為が明確に禁止されました。 - 事業者区分で追加された「常時使用する従業員」とは何ですか?
- 「常時使用する従業員」とは、当該事業者が使用する労働者(労働基準法第9条に規定する労働者をいう)のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外のものをいいます。
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