英文契約書の標準的な構成を詳細解説!
最終更新日:2026年2月17日
英文契約書は、以下の標準的な構成で作成されることが多いです。
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- 題名(Title)
- 契約日(Contract Date / Effective Date)
- 当事者(the Parties)
- リサイタル(Recitals / Preamble)
- 契約本文(Operative Provisions)
- 末尾文言(Execution Clause)
- 署名欄(Signature Block)
- 付表・別紙(Schedule / Exhibit 等)
以下、順に解説していきます。
1.題名(Title)
英文契約書では、以下のとおり、冒頭に契約書の題名が記載されます。
- ・Non-Disclosure Agreement
- ・Sales and Purchase Agreement
- ・Service Agreement
- ・Memorandum of Understanding
題名(Title)それ自体が法的効力を直接生じるわけではありませんが、秘密保持契約書の場合 “Non Disclosure Agreement”、業務委託契約書の場合 “Service Agreement” などと、その契約書の内容がある程度理解できるように、題名(Title)を表示しておくことが一般的です。
2.契約日(Contract Date / Effective Date)
英文契約書では、契約日が重要な意味を持ちます。
契約日については、原則として契約が有効に成立した日を記入します。すべての当事者が同日に立ち会って署名する場合には、その署名日が契約日となります。
一方、当事者ごとに署名日が異なる場合には、通常、最後に署名した当事者の日付を契約日として記載します。三者以上が関与する契約においても同様に、最終署名者の日付をもって契約成立日とするのが一般的です。
これは、全当事者の意思表示がそろった時点で契約が成立するという考え方に基づきます。
もっとも、英文契約書では、実際の署名日とは別に “Effective Date” を定めることがあります。例えば、契約を過去の日付から有効にする(遡及効を持たせる)場合などです。
その場合、冒頭で、以下のように効力発生日を明示することもあります。
This Agreement is made and entered into as of January 1, 2026.
3.当事者(the Parties)
当事者の表示は通常以下のように表示されます。
ABC Inc., a corporation duly organized and existing under the laws of the State of Delaware, having its principal place of business at…
契約書における当事者の表示は、単なる形式的記載ではありません。
その契約書が法的に「誰」と「誰」の間で成立しているのかを明確にするため、当事者の正式名称を正確に記載する必要があります。
ここでいう正式名称とは、登記簿上の名称(registered name)を意味します。略称やブランド名、グループ名などを使用すると、契約の主体が曖昧になり、将来的な紛争の原因となる可能性があります。そのため、法人の場合には、登記された内容に基づく正式名称をそのまま記載することになります。
所在地についても同様に、登記上の本店所在地(registered office)または主たる営業所(principal place of business)を明示します。
これは、当該法人の実体を特定するためだけでなく、送達や管轄の判断にも関係するため、重要な意味を持ちます。
さらに、設立準拠法(governing law of incorporation)も明記されるのが通常です。これは、その法人がどの国(州)の法に基づいて設立され、どの国(州)の法に基づいて法人格を有しているかを示すものです。
当事者は通常以下のとおり表示されます。
ABC Inc., a corporation duly organized and existing under the laws of Japan, having its principal place of business at…
4.リサイタル(Recitals / Preamble)
リサイタルとは、Recitals、Preamble、Whereas Clauses などと呼ばれる部分であり、契約締結に至った背景事情や目的、取引の前提条件などを記載する箇所を指します。
通常は契約書の冒頭部分に置かれ、以下の書き出しで始まることが多く見られます。
WHEREAS, …
この部分では、契約当事者がどのような意図や状況のもとで契約を締結するのかを明示します。例えば、「取引の概要」「協業の目的」などが簡潔に示されます。
リサイタルは、原則として契約本文(Operative Provisions)のように直接的な権利義務を定める条項ではありません。そのため、通常はそれ自体から直ちに法的義務が発生するものではないと解されます。
もっとも、これは「全く意味がない」ということではありません。
契約条項の文言が曖昧である場合、当事者の意思が争われた場合には、リサイタルが契約解釈の補助資料として参照されることがあります。特に英米法圏では、契約の解釈にあたり文脈(context)が重視されるため、リサイタルが一定の役割を果たす可能性があります。
リサイタルは必須の構成要素ではありませんが、契約の背景や目的を明示する重要な部分です。
直接的な法的拘束力を持たないのが原則であるものの、契約解釈の場面では参照されることもありますので、簡潔かつ正確に、かつ実態に即して記載することが必要と言えます。
5.契約本文(Operative Provisions)
この契約本文が契約書の中心部です。
具体的な契約条文が置かれます。
英文契約書は、日本語の契約書よりも条文が長く、定義が詳細である傾向があります。
一般的な構成は次のとおりです。
(1)Definitions(定義条項)
(2)Representations and Warranties(表明保証)
(3)Covenants(義務条項)
(4)Limitation of Liability(責任制限)
(5)MISCELLANEOUS条項(一般条項)
・Governing Law(準拠法)
・Jurisdiction(裁判管轄)
・Assignment(権利義務の譲渡)
・Severability(分離可能性)
・Entire Agreement(完全合意)
契約書の内容によっては、契約本文の構成は変わってきます。
6.末尾文言(Execution Clause)
すべての契約条項が記載された後、末尾文言(Execution Clause)が置かれます。
これは、日本語の契約書でいうところの「本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。」といった趣旨に相当する部分です。
英文契約書では、通常、次のような文言が用いられます。
IN WITNESS WHEREOF, the Parties hereto have executed this Agreement as of the date first above written.
この文言は、当事者が本契約の内容に同意し、これを正式に締結したことを確認する役割を果たします。
実体的な権利義務を新たに定めるものではありませんが、契約書としての形式を完成させる重要な構成要素です。
さらに、この末尾文言は、署名欄と一体となって機能します。
すなわち、当事者が本契約を締結する意思を最終的に表明し、署名する直前の確認文言として位置づけられます。
7.署名欄(Signature Block)
署名欄(Signature Block)には、各当事者の署名が行われます。署名は、契約書に記載された内容について最終的な意思表示を示すものであり、契約成立を確定させる重要な手続きといえます。
署名欄には、通常以下の事項を明示します。
- ・署名(Signature)
- ・氏名(Name)
- ・役職(Title)
氏名や役職は手書きでも形式上は差し支えありませんが、誤読や誤解を防ぐため、あらかじめタイプしておくことが望ましいといえます。
特に、英文契約書を締結する取引においては、署名が判読困難ですから、後になって、署名者の特定が問題となるケースもあります。
7.付表・別紙(Schedule, Exhibit,Appendix, Annex)
契約書において、必ずしも、付表(Schedule、Exhibit、Appendix、Annex など)は必要という訳ではありませんが、契約書の本文をできるだけ簡潔に保つために、広く行われています。
例えば、コンサルティング契約における具体的な業務内容、業務委託契約書の成果物の詳細、MOUにおける検討対象事項の詳細などを本文中にすべて記載してしまうと、条文が長文化し、読み難くなることがあります。また、仕様書や価格表のように、図表形式で示した方が明確な場合もあります。
このような場合、詳細事項を本文から切り離し、別途付表として契約書の末尾に添付する方法が採られます。
これにより、契約の構造が明確になり、本文と詳細資料との役割分担が明確になります。
もっとも、付表は契約書の一部を構成するものであり、当然に契約としての法的効力を有します。契約書本文と矛盾しないよう作成する必要があります。
まとめ
英文契約書には、題名、契約日、当事者の表示、リサイタル、契約本文、末尾文言、署名欄、付表・別紙といった一定の標準的構成で作成されます。
もっとも、形式が整っているだけで十分とはいえません。実際のリスクは、責任範囲、義務内容、準拠法、管轄、表明保証などの実質的条文によって決まってきます。
したがって、英文契約書を検討する際には、基本構造を確認したうえで、条文内容を丁寧に精査することが重要です。その前提として、標準的な構成を理解することがリスクを把握するための第一歩となります。
よくあるご質問
よくあるご質問について、まとめてみました。
- 契約日と署名日が違っていても問題はありませんか?
- 必ずしも問題になるわけではありません。
英文契約書では、実際の署名日とは別に “Effective Date” を定めることがあります。例えば、契約書の作成や署名が数日にわたる場合、実務上すでに取引が開始されている場合、効力発生日を特定の日に統一するためです。 - リサイタル(Recitals)は必ず入れなければなりませんか?
- 必須ではありません。
リサイタルがなくても契約は有効に成立します。
もっとも、英文契約の背景や目的を明示することで、条文の解釈が明確になる場合があります。
条文が曖昧なときに参照される可能性もあるため、記載する場合は正確かつ簡潔に記述することが重要です。
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